TRENDIA CLASSIC

四日間

ガールシン

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忘れもせぬ、其時味方は森の中を走るのであった。シュッシュッという弾丸の中を落来る小枝をかなぐりかなぐり、山査子の株を縫うように進むのであったが、弾丸は段々烈しくなって、森の前方に何やら赤いものが隠現見える。第一中隊のシードロフという未だ生若い兵が此方の戦線へ紛込でいるから如何してだろう?と忙しい中で閃と其様な事を疑って見たものだ。スルト其奴が矢庭にペタリ尻餠を搗いて、狼狽た眼を円くして、ウッとおれの面を看た其口から血が滴々々……いや眼に見えるようだ。眼に見えるようなは其而已でなく、其時ふッと気が付くと、森の殆ど出端の蓊鬱と生茂った山査子の中に、居るわい、敵が。大きな食肥た奴であった。俺は痩の虚弱ではあるけれど、やッと云って躍蒐る、バチッという音がして、何か斯う大きなもの、トサ其時は思われたがな、それがビュッと飛で来る、耳がグヮンと鳴る。打たなと気が付た頃には、敵の奴めワッと云て山査子の叢立に寄懸って了った。匝れば匝られるものを、恐しさに度を失って、刺々の枝の中へ片足踏込で躁って藻掻いているところを、ヤッと一撃に銃を叩落して、やたら突に銃劔をグサと突刺すと、獣の吼るでもない唸るでもない変な声を出すのを聞捨にして駈出す。味方はワッワッと鬨を作って、倒ける、射つ、という真最中。俺も森を畑へ駈出して慥か二三発も撃たかと思う頃、忽ちワッという鬨の声が一段高く聞えて、皆一斉に走出す、皆走出す中で、俺はソノ……旧の処に居る。ハテなと思た。それよりも更と不思議なは、忽然として万籟死して鯨波もしなければ、銃声も聞えず、音という音は皆消失せて、唯何やら前面が蒼いと思たのは、大方空であったのだろう。頓て其蒼いのも朦朧となって了った……