恋衣
本文約12,100字 ・ 読了時間 約25分
あらすじ(AIが作成しました)
山川登美子、増田雅子、與謝野晶子の三名による詩集は、恋や情熱、喪失といった繊細な心情を歌う。日々の暮らしや自然の風景の中に身を置きながら、愛する人への思いや別れの悲しみ、そして戦地へ赴く弟への痛切な願いを綴る。個々の詩編を通じて、当時の女性たちが抱いた揺れ動く魂の叫びや、神聖な祈りにも似た切実な愛情のあり方を叙情豊かに描き出す。
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詩人薄田泣菫の君に捧げまつる
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絵画目次[#省略]
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詩目次[#底本では各項は、「君死に給ふこと勿れ」に合わせて均等割付]
白百合
みをつくし
曙染
君死に給ふこと勿れ
恋ふるとて
いかが語らむ
皷いだけば
しら玉の
冥府のくら戸は
[#改丁]
白百合
山川登美子
髪ながき少女とうまれしろ百合に額は伏せつつ君をこそ思へ
聖壇にこのうらわかき犠を見よしばしは燭を百にもまさむ
そは夢かあらずまぼろし目をとぢて色うつくしき靄にまかれぬ
日を経なばいかにかならむこの思たまひし草もいま蕾なり
射あつべし射あてじとても矢はつがへ金の桂に額まける君
恋せじと書かせたまふか琴にしてともにと植ゑし桐のおち葉に
こがね雲ただに二人をこめて捲けなかのへだてを神もゆるさじ
手もふれぬ琴柱たふれてうらめしき音をたてわたる秋の夕かぜ
何といふところか知らず思ひ入れば君に逢ふ道うつくしきかな
このもだえ行きて夕のあら海のうしほに語りやがて帰らじ
この塚のぬしを語るな名を問ふなただすみれぐさひとむら植ゑませ
紅の花朝々つむにかずつきず待つと百日をなぐさめ居らむ
ひとすぢを千金に買ふ王もあれ七尺みどり秋のおち髪
わが息を芙蓉の風にたとへますな十三絃をひと息に切る
またの世は魔神の右手の鞭うばひ美くしき恋みながら打たむ
袖たてて掩ひたまふな罪ぞ君つひのさだめを早うけて行かむ
うつつなく消えても行かむわかき子のもだえのはての歌ききたまへ
わすれじなわすれたまはじさはいへど常のさびしき道ゆかむ身か
われゆゑに泣かせまつりぬゆるしませよわき少女にいま秋のかぜ
わが胸のみだれやすきに針もあてずましろききぬをかづきて泣きぬ
狂へりや世ぞうらめしきのろはしき髪ときさばき風にむかはむ
裾きえて蕋のまなかに立つと見ぬ天の香をもつ百合花のうへ
うるはしき神の旅路と答へまつりともづな解かむ波のまにまに
をみなへしをとこへし唯うらぶれて恨みあへるを京の秋に見し (明治三十三年の秋)
にほひもれて人のもどきのわづらはし袖におほひていだく白百合
さらば君氷にさける花の室恋なき恋をうるはしと云へ
その涙のごひやらむとのたまひしとばかりまでは語り得れども