最終の午後
本文約4,200字 ・ 読了時間 約9分
あらすじ(AIが作成しました)
公園の道で別れを告げる男女が、かつて女が男に見せた夫の写真を巡る駆け引きを回顧する。男は以前、その写真の好男子と張り合い努力を続けたが、後の手紙の一件で正体を知り恋が冷めたと語る。女は男を鼓舞し成長させるためにわざと写真を提示し、関係を円満に終わらせるために手紙を落としたと明かす。恋が冷めた理由すら女の思惑通りであったと知り、男が呆然とする中で女は去っていく様子を描く。
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市の中心を距ること遠き公園の人気少き道を男女逍遥す。
女。そこでこれ切りおしまいにいたしましょうね。まあ、お互に成行に任せた方が一番よろしゅうございますからね。つまりそうした時が来ましたのですわ。さあ、お別れにこの手にキスをなさいまし。これからはまたただのお友達でございますよ。
男。さよう。どうも思召通りにするより外ありません。
女。ともかくもお互の間に愉快な、わだかまりの無い記念だけは残っていると云うものでございますね。二人は惚れ合っていました。キスをしました。厭きました。そこでおさらばと云うわけでございますからね。
男。いかにもおっしゃる通りです。(女の手に接吻す。)
女。そこでわたくしはこの道を右に参りましょう。あなたは少しの間ここに立って待っていらっしゃって、それから左の方へおいでなさいまし。せっかくお別れをいたす日になって、宅にでも見附けられると、詰まりませんからね。
男。いかさま。そんならこれで。
(二人ともなお立ち止まりいる。)
女。なぜいらっしゃらないの。
男。実はお別れをする前に少し伺っておきたい事があるものですから。
女。そう。さあ、なんでもおっしゃいましよ。
男。あの始めてタトラでお目にかかった時ですね。あの時はお内の御主人がどんな方だか知らなかったのでございますね。あなたは婦人のお友達二三人とあっちへ避寒に来ていらっしゃったのです。
女。ええ。
男。それからですね。どんな風に事柄が運んで行ったと云うことはあなたもまだ覚えていらっしゃるでしょう。ブダペストへ参ってからも、わたくしはあなたと御交際を続けて行きました時も、まだ御主人がどんな方だか知らなかったのですね。
女。ええ。