TRENDIA CLASSIC

家なき子

マロ Malot

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ジャンチイイの石切り場

わたしたちはやがて人通りの多い往来へ出たが、歩いているあいだ親方はひと言も言わなかった。まもなくあるせまい小路へはいると、かれは往来の捨て石にこしをかけて、たびたび額を手でなで上げた。それは困ったときによくかれのするくせであった。

「いよいよ慈善家の世話になるほうがよさそうだな」とかれは独り言のように言った。「だがさし当たりわたしたちは一銭の金も、一かけのパンもなしに、パリのどぶの中に捨てられている……おまえおなかがすいたろう」とかれはわたしの顔を見上げながらたずねた。

「わたしはけさいただいた小さなパンだけで、あれからなにも食べませんでした」

「かわいそうにおまえは今夜も夕食なしにねることになるのだ。しかもどこへねるあてもないのだ」

「じゃあ、あなたはガロフォリのうちにとまるつもりでしたか」

「わたしはおまえをあそこへとめるつもりだった。それであれが冬じゅうおまえを借りきる代わりに、二十フランぐらいは出そうから、それでわしもしばらくやってゆくつもりだった。けれどあの男があんなふうに子どもらをあつかう様子を見ては、おまえをあそこへは置いて行けなかった」

「ああ、あなたはほんとにいい人です」

「まあ、たぶんこの年を取って固くなった流浪人の心にも、まだいくらか若い時代の意気が残っているとみえる。この年を取った流浪人はせっかく狡猾に胸算用を立てても、まだ心の底に残っている若い血がわき立って、いっさいを引っくり返してしまうのだ……さてどこへ行こうか」とかれはつぶやいた。

もうだいぶおそくなって、ひどく寒さが加わってきた。北風がふいてつらい晩が来ようとしていた。長いあいだ、親方は石の上にすわっていた。カピとわたしはだまってその前に立って、なんとか決心のつくまで待っていた。とうとうかれは立ち上がった。

「どこへ行くんです」

「ジャンチイイ。そこでいつかねたことがある石切り場を見つけることにしよう。おまえつかれているかい」

「ぼくはガロフォリの所で休みました」

「わたしは休まなかったので、どうもつらい。あまり無理はできないが、行かなければなるまい。さあ前へ進め、子どもたち」

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