世界怪談名作集
本文約19,800字 ・ 読了時間 約40分
あらすじ(AIが作成しました)
プラーグの大学生コスモ・フォン・ウェルスタールは、古い鏡に隠された神秘に魅せられ、その鏡を通じてある女性を深く愛するようになる。現実の接点がないまま彼女への思慕を募らせる彼は、鏡が映し出す幻影の世界で想いを深めていく。やがて、昏睡状態から目覚めた女性が鏡を壊して解放を求め、夜の街で二人は対面する。空想と現実が交錯する中、彼らの運命は鏡が繋いだ不可思議な縁によって決定的な瞬間を迎える。
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一
コスモ・フォン・ウェルスタールはプラーグの大学生であった。
彼は貴族の一門であるにもかかわらず、貧乏であった。そうして、貧乏より生ずるところの独立をみずから誇っていた。誰でも貧乏から逃がれることが出来なければ、むしろそれを誇りとするよりほかはないのである。彼は学生仲間に可愛がられていながら、さてこれという友達もなく、学生仲間のうちでまだ一人も、古い町の最も高い家の頂上にある彼の下宿の戸口へはいった者はないのであった。
彼の謙遜的の態度が仲間内には評判がよかったのであるが、それは実のところ彼の隠遁的の思想から出ているのであった。夜になると、彼は誰からも妨げられることなしに、自分の好きな学問や空想にふけるのである。それらの学問のうちには、学校の課程に必要な学科のほかに、あまり世間には知られもせず、認められもしないようなものが含まれていた。彼の秘密の抽斗には、アルベルタス・マグナス(十三世紀の科学者、神学者、哲学者)や、コンネリウス・アグリッパ(十五世紀より十六世紀にわたる哲学者で、錬金術や魔法を説いた人)の著作をはじめとして、その他にもあまりひろく読まれていない書物や、神秘的のむずかしい書物などがしまい込まれてあった。しかもそれらの研究は単に彼の好奇心にとどまって、それを実地に応用してみようなどという気はなかったのである。