世界怪談名作集
本文約23,700字 ・ 読了時間 約48分
あらすじ(AIが作成しました)
大西洋を航海する汽船カムチャツカ号に乗船したブリスバーンは、ある夜、同室の男が消息を絶った後の船内で怪奇な現象に遭遇する。窓が勝手に開く不気味な状況に苛立つ彼は、給仕と共に客室を確認するが、そこで船長と共に得体の知れない怪物と対峙することになる。粘つくような質感と腐敗した海水の臭いを放つ生ける屍のような存在との格闘の末、怪物は姿を消す。以来、その客室は封印され、関わった者たちは二度とその船に乗ることはなかった。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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一
誰かが葉巻を注文した時分には、もう長いあいだ私たちは話し合っていたので、おたがいに倦きかかっていた。煙草のけむりは厚い窓掛けに喰い入って、重くなった頭にはアルコールが廻っていた。もし誰かが睡気をさまさせるようなことをしない限りは、自然の結果として、来客のわれわれは急いで自分たちの部屋へかえって、おそらく寝てしまったに相違なかった。
誰もがあっと言わせるようなことを言わないのは、誰もあっと言わせるような話の種を持っていないということになる。そのうちに一座のジョンスが最近ヨークシャーにおける銃猟の冒険談をはじめると、今度はボストンのトンプキンス氏が、人間の労働供給の原則を細目にわたって説明し始めた。
それによると、アッチソンやトペカやサンタ・フェ方面に敷設された鉄道が、その未開の地方を開拓して州の勢力を延長したばかりでなく、また、その工事を会社に引き渡す以前から、その地方の人びとに家畜類を輸送して飢餓を未然に防いだばかりでなく、長年のあいだ切符を買った乗客に対して、前述の鉄道会社がなんらの危険なしに人命を運搬し得るものと妄信させたのも、一にこの人間の労働の責任と用心ぶかき供給によるものであるというのであった。
すると、今度はトムボラ氏が、彼の祖国のイタリー統一は、あたかも偉大なるヨーロッパの造兵廠の精巧なる手によって設計された最新式の魚形水雷のようなものであって、その統一が完成されたあかつきには、それが弱い人間の手によって、当然爆発すべき無形の地、すなわち混沌たる政界の荒野に投げられなければならないということを、われわれに納得させようとしていたが、そんな論説はもう私たちにはどうでもよかった。