TRENDIA CLASSIC
世界怪談名作集
ストックトン Francis Richard Stockton
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ジョン・ヒンクマン氏の田園住宅は、いろいろの理由から僕にとっては甚だ愉快な場所で、やや無遠慮ではあるが、まことに居心地のよい接待ぶりの寓居であった。庭には綺麗に刈り込んだ芝原と、塔のように突っ立った槲や楡の木があって、ほかにも所どころに木立ちが茂っていた。家から遠くないところに小さい流れがあって、そこには皮付きの粗末な橋が架けてあった。
ここらには花もあれば果物もあり、愉快な人たちも住んでいて、将棋、玉突き、騎馬、散歩、魚釣りなどの遊戯機関もそなわっていた。それらはもちろん、大いに人を惹くの力はあったが、単にそれだけのことでは、そこに長居をする気にはなれない。僕は鱒の捕れる時節に招待されたのであるが、まず初夏の時節をよしとして訪問したのである。草は乾いて、日光はさのみ暑からず、そよそよと風が吹く。その時、わがマデライン嬢とともに、枝の茂った楡の下蔭をそぞろに歩み、木立のあいだをしずかに縫ってゆくのであった。
僕はわがマデライン嬢といったが、実のところ、彼女はまだ僕のものではないのである。彼女はその身を僕に捧げたというわけでもなく、僕のほうからもまだなんとも言い出したのではなかったが、自分が今後この世に生きながらえてゆくには、どうしても彼女をわがものにしなければならないと考えているので、自分の腹のうちだけでは、彼女をわがマデラインと呼んでいるのであった。自分の考えていることを早く彼女の前に告白してしまえば、こんな独りぎめなどをしている必要はないのであるが、さてそれが非常にむずかしい事件であった。