TRENDIA CLASSIC
頸飾り
――モウパンサン――
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その女というのは男好きのしそうなちょっと見奇麗な娘であった。このような娘は折々運命の間違いであまりかんばしくない家庭に生まれてくるものである。無論、持参金というようなものもなく、希望など兎の毛でついた程もなかった。まして金のある上流の紳士から眼をつけられて愛せられ、求婚されるというようなことは夢にもありはしない。とかくして、彼女はある官庁の小役人の処に嫁くこととなった。
華美に衣飾ることなど出来ようはずがない。で彼女は仕方なく質素な服装をしていた。けれど心中は常時も不愉快で、自分がまさに行くべき位置に行くことも出来ず、みすみす栄ない日々の生活を送らなければならないのかと真から身の不幸せを歎いていた。成程女は氏なくして玉の輿という、生来の美しさ、優やかさ、艶やかさ、それらがやがて地位なり、財産というものなのだ。それを他にしてなにがなる? それさえあれば下町の娘も高貴の令嬢もあまり変わりはない――道理なことである。