TORENDIA
頸飾り
――モウパンサン――
TORENDIA
頸飾り
本文約8,300字 ・ 読了時間 約17分
あらすじ(AIが作成しました)
官庁の小役人の妻であるマシルドは、美しく装うことに憧れ、平穏な生活に不満を抱いていた。ある夜、夜会へ招待された彼女は、華やかな姿で参加するために、友人からダイヤモンドの頸飾りを借り受ける。しかし、夜会で成功を収めた帰宅後、その頸飾りを紛失してしまう。高価な代物だと思い込んだ彼女は、借金をしてまで同様の頸飾りを購入し、多額の返済に追われる困窮した生活を十年もの間送ることになる。
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その女というのは男好きのしそうなちょっと見奇麗な娘であった。このような娘は折々運命の間違いであまりかんばしくない家庭に生まれてくるものである。無論、持参金というようなものもなく、希望など兎の毛でついた程もなかった。まして金のある上流の紳士から眼をつけられて愛せられ、求婚されるというようなことは夢にもありはしない。とかくして、彼女はある官庁の小役人の処に嫁くこととなった。
華美に衣飾ることなど出来ようはずがない。で彼女は仕方なく質素な服装をしていた。けれど心中は常時も不愉快で、自分がまさに行くべき位置に行くことも出来ず、みすみす栄ない日々の生活を送らなければならないのかと真から身の不幸せを歎いていた。成程女は氏なくして玉の輿という、生来の美しさ、優やかさ、艶やかさ、それらがやがて地位なり、財産というものなのだ。それを他にしてなにがなる? それさえあれば下町の娘も高貴の令嬢もあまり変わりはない――道理なことである。