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TORENDIA

センチメンタル・ドライヴ

本文約3,700字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

賑やかな友人たちの騒ぎに疲れた僕は、月夜の海辺を散歩するうちに高揚感に包まれ、一人浮かれ歩く。やがてオートバイに乗った友人Gと出会い、彼が誰かに恋をしていると察した僕は、側車に乗せてもらう。Gは皆と踊るために思いを寄せる相手を迎えに行く途中だと打ち明け、僕は彼に同行しながら、真夜中の街を猛スピードで駆け抜けていく。友人同士の奇妙な共感と、やり場のない青春の焦燥を描く物語。

牧野信一

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🎧 センチメンタル・ドライヴ / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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「弾け! 弾け! その手風琴で沢山だ。」

「南北戦争の兵隊でもが持つやうな手風琴だな、ハツハツハ! 横ツ腹が大分破れてゐるぢやないか!」

「お前の胸には打つてつけだらうG――」

「失敬な、弾かねえぞ!」

「弾け! 弾け! リング、リング・ド・バンジョウ! あんなものを弾くにはそれで沢山だよ、K! お前は一緒にハモニカを吹け!」

「オーライ!」

「ぢや、俺もオーライとしよう!」

Gの言葉だけが隣りの部屋で、たゞぼんやりしてゐる僕の耳に、Gのだ! と解るのであつた、何といふ

わけもなしに――。

「歌はう!」

「踊らう!」

「プロージッド!」

水を飲んで、あの騒ぎだ! と僕は思つた。何がそんなに面白いんだらう! 一体何に彼等は、あんなに浮れてゐるんだらう!

「あきれたカレッヂ・ネキタイ達よ!」

――「Gの手風琴は厭に間のびがしてゐて、やつぱりいけないな。Gの奴、大分今夜は何うかしてゐるね。」

「…………」

「あの音楽係は免職にして、蓄音機にしよう!」

「そしてGも一緒に踊れ!」

「うむ、踊りの方が俺も好い。その代りあんまり俺の側へ寄るなよ。」

「たしかにメートルが狂つてゐるぞ!」

「喋舌るな/\? さあ始めろ! あの滅茶苦茶に賑やかな when you are alone あの Fox-trot!」

「レデイ!」

大変な騒ぎだ! と僕は思つた。窓に月の光りが射してゐた。

決して不愉快ではなかつたが僕は、頭がガンガンしてしまつたので、ひとりで散歩に出かけた。

いつの間にか海辺まで来てしまつた。

あの時誰かゞ云つた、あの滅茶苦茶に賑やかな when you are alone――その言葉が私の頭に妙に残つてゐた。

「お前がたつたひとりの時に――なんて云ふ題目の音楽が、滅茶苦茶に賑やかだ! なんて可笑しいな!」

いつも大変常識的な、勿論音楽のことなどは何も知らない僕は、馬鹿々々しさうに呟いた。

たつた一人の時なら静かに違ひないぢやないか、たつた一人で賑やかならば気狂ひだ、つまらぬ音譜があつたものだ!

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