「弾け! 弾け! その手風琴で沢山だ。」
「南北戦争の兵隊でもが持つやうな手風琴だな、ハツハツハ! 横ツ腹が大分破れてゐるぢやないか!」
「お前の胸には打つてつけだらうG――」
「失敬な、弾かねえぞ!」
「弾け! 弾け! リング、リング・ド・バンジョウ! あんなものを弾くにはそれで沢山だよ、K! お前は一緒にハモニカを吹け!」
「オーライ!」
「ぢや、俺もオーライとしよう!」
Gの言葉だけが隣りの部屋で、たゞぼんやりしてゐる僕の耳に、Gのだ! と解るのであつた、何といふ
わけもなしに――。
「歌はう!」
「踊らう!」
「プロージッド!」
水を飲んで、あの騒ぎだ! と僕は思つた。何がそんなに面白いんだらう! 一体何に彼等は、あんなに浮れてゐるんだらう!
「あきれたカレッヂ・ネキタイ達よ!」
――「Gの手風琴は厭に間のびがしてゐて、やつぱりいけないな。Gの奴、大分今夜は何うかしてゐるね。」
「…………」
「あの音楽係は免職にして、蓄音機にしよう!」
「そしてGも一緒に踊れ!」
「うむ、踊りの方が俺も好い。その代りあんまり俺の側へ寄るなよ。」
「たしかにメートルが狂つてゐるぞ!」
「喋舌るな/\? さあ始めろ! あの滅茶苦茶に賑やかな when you are alone あの Fox-trot!」
「レデイ!」
大変な騒ぎだ! と僕は思つた。窓に月の光りが射してゐた。
決して不愉快ではなかつたが僕は、頭がガンガンしてしまつたので、ひとりで散歩に出かけた。
いつの間にか海辺まで来てしまつた。
あの時誰かゞ云つた、あの滅茶苦茶に賑やかな when you are alone――その言葉が私の頭に妙に残つてゐた。
「お前がたつたひとりの時に――なんて云ふ題目の音楽が、滅茶苦茶に賑やかだ! なんて可笑しいな!」
いつも大変常識的な、勿論音楽のことなどは何も知らない僕は、馬鹿々々しさうに呟いた。
たつた一人の時なら静かに違ひないぢやないか、たつた一人で賑やかならば気狂ひだ、つまらぬ音譜があつたものだ!