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TORENDIA

寄生木と縄梯子

本文約2,200字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

山奥の材木工場で新生活を送る男女は、クリスマスを祝うため、聖なる宿り木を探しに森へ入る。周囲の誰に聞いてもその植物を知る者はいないが、ようやく見つけた高所の宿り木を採取するため、彼らは木挽から借りた縄梯子を樅の木に懸ける。未来を誓い合う二人にとって幸福の象徴であるその枝を目指し、男はかつての木登りの恐怖を抱えながら、静寂な森の中でゆっくりと縄梯子を登り始める。

牧野信一

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🎧 寄生木と縄梯子 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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「ヤドリ木――知つてゐますか?」

「……知らんのう、実物を見たら、あゝ、これか――と思ふかも知んないが……ヤドリ木? 聞いたこともない。」

誰に訊ねても同じ返答ばかりであつた。私は、小屋を出てから同じ質問を若い木挽にも訊いた。山頭の炭焼の老人にも訊いた。鈴を鳴して橇道を滑走して来る橇の一隊をさへぎつて、皆なに訊いたが、一様に首をかしげて顔を見合せてゐるだけだつた。

「有りがたう――兎も角僕はそれを是非とも探して来なければならないので、暫くの間休ませて貰ひますよ。タイピストと二人――」

「現場のあたりへ行つて見なされよ。」

行列は気の毒さうに斯う云つて、鈴を鳴して降つて行つた。

「屹度見つけるであらう、僕は――」

私は、アメリカ語で、フロラを顧みて橇道から森の中へ入つて行つた。

麓の村から三哩、馬の背で踏み入る山奥の材木工場で、フロラと私はその年のクリスマスを迎へようとしてゐた。山に働く他の凡ての人々は、この宗教に全く関心を持たぬ村人達であつたから、フロラと私がたつた二人で、事務所である丸木小屋で花やかな祭りを催すことにした。二人の者は、凡ゆる力を惜まずに此工場で働くことに依つて、希望に充ちた新生活を展く決心だつたから、この時も町へ帰らうともせず、寧ろ此上もない祝福を抱いて、たくましい原始生活と闘ふてゐた時のことである。

仕事の合間を見て部屋の飾りつけを施すのであつたから、三日前から支度をして、この日の午前には凡て整頓されてゐた。関心は持たなくても祭りの悦びだけは迷惑にならぬであらう、楽しい夕べが訪れたならば、サンタクロースには山頭の老人を頼まう、子供達や若者を集めてテープを投げ合はう、村祭りの踊りを所望しよう、此方は私が手風琴を弾くから、フロラは一つお得意のロココ風の踊りを批露すべしだ――プログラムまでがきまつてゐた。

飾りつけが出来た時に不図フロラが、

「ミスルトウは?」

と気附いた。

「何処にでもあるに違ひない、こんな森の中だもの――だが、愉快な形式を尊重して、一枝のミスルトウを、二人がゝりで探しに行くといふ古風な夢を実現して見ようではないか……」

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