本文へ移動
TORENDIA

手紙 一

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

強い力と猛毒を持つ一疋の竜は、悪事をやめると誓い林の中で眠りにつく。蛇の姿で眠る竜を珍しい獲物と勘違いした猟師たちは、生きたままその皮を剥ぎ取る。竜は誓いを守るために苦痛を堪え、反撃を一切せず身を捧げることを決意する。皮を失い赤身をさらした竜は、寄ってくる虫たちにも自らの肉を分け与え、静かにその一生を終える。本作は、竜の慈悲深い振る舞いと、その後の魂の在り方を通じて、まことの道を説く物語である。

宮沢賢治

速度
🎧 手紙 一 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 2

むかし、あるところに一疋の竜がすんでいました。

力が非常に強く、かたちも大層恐ろしく、それにはげしい毒をもっていましたので、あらゆるいきものがこの竜に遭えば、弱いものは目に見ただけで気を失って倒れ、強いものでもその毒気にあたってまもなく死んでしまうほどでした。この竜はあるとき、よいこころを起して、これからはもう悪いことをしない、すべてのものをなやまさないと誓いました。

そして静かなところを、求めて林の中に入ってじっと道理を考えていましたがとうとうつかれてねむりました。

全体、竜というものはねむるあいだは形が蛇のようになるのです。

この竜も睡って蛇の形になり、からだにはきれいなるり色や金色の紋があらわれていました。

そこへ猟師共が来まして、この蛇を見てびっくりするほどよろこんで云いました。

「こんなきれいな珍らしい皮を、王様に差しあげてかざりにしてもらったらどんなに立派だろう。」

そこで杖でその頭をぐっとおさえ刀でその皮をはぎはじめました。竜は目をさまして考えました。

「おれの力はこの国さえもこわしてしまえる。この猟師なんぞはなんでもない。いまおれがいきをひとつすれば毒にあたってすぐ死んでしまう。けれども私はさっき、もうわるいことをしないと誓ったしこの猟師をころしたところで本当にかあいそうだ。もはやこのからだはなげすてて、こらえてこらえてやろう。」

すっかり覚悟がきまりましたので目をつぶって痛いのをじっとこらえ、またその人を毒にあてないようにいきをこらして一心に皮をはがれながらくやしいというこころさえ起しませんでした。

猟師はまもなく皮をはいで行ってしまいました。

竜はいまは皮のない赤い肉ばかりで地によこたわりました。

この時は日がかんかんと照って土は非常にあつく、竜はくるしさにばたばたしながら水のあるところへ行こうとしました。

このとき沢山の小さな虫が、そのからだを食おうとして出てきましたので蛇はまた、

宮沢賢治の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本