ジャン・クリストフ
本文約13,300字 ・ 読了時間 約27分
あらすじ(AIが作成しました)
音楽の才を持つ少年クリストフは、日常のあらゆる響きを旋律に変えて作曲に打ち込む。幼少期に偉大な音楽家から受けた影響を糧に成長する中、誠実な姿勢で音楽と向き合うよう諭す小父ゴットフリートとの交流を通じて、自身の内面と向き合い始める。高慢な動機を厳しく指摘される苦い経験を重ねながらも、音楽の本質である純粋な感情を表現することの大切さを学び、やがてその天分と努力によって偉大な音楽家へと歩んでいく姿を描く物語である。
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前がき
『ジャン・クリストフ』の作者ロマン・ローランは、西暦千八百六十六年フランスに生まれて、現在ではスウィスの山間に住んでいます。純粋のフランス人の血すじをうけた人で、するどい知力をもっています。世界中の人々がみなお互に愛しあい、そして力強く生きてゆくこと、それが彼の理想であり、そして彼はいつも平和と自由と民衆との味方であります。
これまでの彼の仕事は、いろいろな方面にわたっています。第一に、五つの小説があり、そのなかで『ジャン・クリストフ』は、いちばん長いもので、そしていちばん有名です。ここに掲げたのはその中の一節です。第二に、十あまりの戯曲があり、そのなかで、フランス革命についてのものと信仰についてのものとが、重なものです。第三に、十ばかりの偉人の伝記があり、そのなかで、ベートーヴェンとミケランゼロとトルストイとの三つの伝記は、もっとも有名です。第四に、音楽や文学や社会問題やそのほかにいろいろなものについて多くの評論があります。
彼はいま、スウィスの田舎に静かな生活をしながら、仕事をしつづけています。そして人間はどういう風に生きてゆくべきかということについて、考えつづけています。(訳者)
クリストフがいる小さな町を、ある晩、流星のように通りすぎていったえらい音楽家は、クリストフの精神にきっぱりした影響を与えた。幼年時代を通じて、その音楽家の面影は生きた手本となり、彼はその上に眼をすえていた。わずか六歳の少年たる彼が、自分もまた楽曲を作ってみようと決心したのは、この手本に基いてであった。だがほんとうのことをいえば、彼はもうずいぶん前から、知らず知らずに作曲していた。彼が作曲し始めたのは、作曲していると自分で知るよりも前のことだったのである。