TORENDIA
眞間名所
阪井久良伎
TORENDIA
眞間名所
本文約3,200字 ・ 読了時間 約7分
あらすじ(AIが作成しました)
千葉県市川町真間に隠居した筆者が、三本松や継橋などの地域の史蹟、真間の手児名ゆかりの霊堂、真間山弘法寺、里見公園といった名所旧跡の現状を綴る随筆である。かつての史蹟が荒廃し、周囲の人々がその風情に関心を持たない状況を嘆きつつ、歴史的な由緒や詩歌の題材としての魅力を紹介する。筆者は生活の中に宿る美的な感情や詩的な情緒が、現代の功利主義的な風潮の中で失われつつあることを憂い、郷土の歴史や文化を再評価する必要性を説く。
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三本松と繼橋
千葉縣市川町眞間に引退してから、最早滿三年に成る。友人桐ヶ谷洗鱗畫伯逝いて一年以上、話相手に乏しい余は、切めて史蹟名勝に依つて心を慰めんとするが、一向に趣味の上に心のない町の人々は、史蹟など念頭においてゐない樣である。明治六年習志野の演習へ行幸遊ばされた明治大帝が、その樹下を御通行の際「美事なる松よ」とお褒めになつた市川町の名物三本松も、其一本が盤屈して街道を横斷してゐるのを、下をコンクリートにし、その樹腹をトラツクの荷物で皮をむいて了つた故、とう/\責め殺されて枯れて了つた。手をつけると祟りが恐ろしいとかで、立枯のまゝになつてゐる。
余は三本松の時代放れした姿が氣に入つた。
トラツクにお辭儀をさせる松もあり
元日に三本松は見直され
等の川柳を詠んだが、昨今では、
繼橋は腐り三本松は枯れ
市川競馬だけのみに熱中する町の人々を吾人は反省させたく、いつも考へてゐる。
鬪犬と競馬の中で句を作り
繼橋は萬葉集東歌の中に下總國の歌として、
足の音せず行かん駒もが葛飾の
眞間の繼橋やまず通はん