TRENDIA CLASSIC

愛ちやんの夢物語

レウィス、キァロル Lewis Carroll

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はしがき

此書は有名なレウィス、キァロルと云ふ人の筆に成つた『アリス、アドヴェンチュアス、イン、ワンダーランド』を譯したものです。邪氣なき一少女の夢物語、滑稽の中自ら教訓あり。むかし、支那の莊周といふ人は、夢に胡蝶と化つたと云ふ話しがありますが、夢なればこそ、漫々たる大海原を徒渉りすることも出來ます、空飛ぶ鳥の眞似も出來ます。世に夢ほど面白いものはありません。今少時、※[#「女+(「第-竹」の「コ」に代えて「丿」)、「姉」の正字」、U+59CA、1-7]さんの膝を枕の假寐に結んだ愛ちやんの夢、解いてほどけば美しい花の數々、色鮮かにうるはしきを摘みなして、この一篇のお伽噺は出來あがつたのです。

明治四十二年十二月譯者 [#改丁]

第一章

兎の穴へ

愛ちやんは、※[#「女+(「第-竹」の「コ」に代えて「丿」)、「姉」の正字」、U+59CA、1-4]さんと堤の上にも坐り勞れ、その上、爲ることはなし、所在なさに堪へ切れず、再三※[#「女+(「第-竹」の「コ」に代えて「丿」)、「姉」の正字」、U+59CA、1-5]さんの讀んでる書物を覘いて見ましたが、繪もなければ會話もありませんでした。愛ちやんは、『繪もなければ會話もない書物が何の役に立つだらうか?』と思ひました。

それで愛ちやんは、慰みに雛菊で花環を造つて見やうとしましたが、面倒な思ひをしてそれを探したり摘んだりして勘定に合ふだらうかと、(暑い日で直に眠くなつたり、然するものだから一心に)心の中で考へてゐますと、突然可愛い眼をした白兎が、その傍に驅け寄つて來ました。