女の決闘
本文約8,700字 ・ 読了時間 約18分
あらすじ(AIが作成しました)
ある男の妻を自認する女は、夫と関係を持つロシアの女子学生に対し、拳銃による決闘を申し込む。二人は人目のない停車場近くの原野へ赴き、白樺の森を背にそれぞれ十二歩離れて立つ。緊張の中で行われた銃撃の結果、女子学生は頸に傷を負い、妻は名誉を救った一方で自身の恋愛は癒えない不治の傷であることを悟る。復讐の果てに虚無感を抱いた妻は、自らの恋愛と名誉を巡り、神や夫の影を交えながらその心情を吐露する。
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古来例のない、非常な、この出来事には、左の通りの短い行掛りがある。
ロシアの医科大学の女学生が、ある晩の事、何の学科やらの、高尚な講義を聞いて、下宿へ帰って見ると、卓の上にこんな手紙があった。宛名も何も書いてない。「あなたの御関係なすっておいでになる男の事を、ある偶然の機会で承知しました。その手続きはどうでも好い事だから、申しません。わたくしはその男の妻だと、只今まで思っていた女です。わたくしはあなたの人柄を推察して、こう思います。あなたは決して自分のなすった事の成行がどうなろうと、その成行のために、前になすった事の責を負わない方ではありますまい。またあなたは御自分に対して侮辱を加えた事のない第三者を侮辱して置きながら、その責を逃れようとなさる方でも決してありますまい。わたくしはあなたが、たびたび拳銃で射撃をなさる事を承っています。わたくしはこれまで武器というものを手にした事がありませんから、あなたのお腕前がどれだけあろうとも、拳銃射撃は、わたくしよりあなたの方がお上手だと信じます。
そこでわたくしはあなたに要求します。それは明日午前十時に、下に書き記してある停車場へ拳銃御持参で、おいで下されたいと申す事です。この要求を致しますのに、わたくしの方で対等以上の利益を有しているとは申されますまい。わたくしも立会人を連れて参りませんから、あなたもお連にならないように希望いたします。ついでながら申しますが、この事件について、前以て問題の男に打明ける必要はないと信じます。その男にはわたくしが好い加減な事を申して、今明日の間遠方に参っていさせるように致しました。」
この文句の次に、出会うはずの場所が明細に書いてある。名前はコンスタンチェとして、その下に書いた苗字を読める位に消してある。