TRENDIA CLASSIC

〔編輯余話〕

牧野信一

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入社の辞〔『少女』〕

私はこの七月から入社いたし皆様のために働くことゝなりました。私の心は悦しさに充ちて居ります。それは皆様といふ沢山なお友達を得ることが出来たからであります。庭の草花もほゝえむでゐるかのやうに見える程、私は爽かさを感じながら面白く仕事をして居ります。

しかし世の中のことがさう易々と運ばれるわけはありません。殊に巣を出たばかりの私のすることは定めし皆様方に御不満が多からうと恐れてゐます。いづれは努力の結果が玉となつて皆様の前に見出される日はなければならないと私は堅く信じてゐます。

未来は長いのです。私はこれから皆様の前に活動することのみによつて、私の芸術を築き上げる決心です。

入社の辞〔『少年』〕

私は此の度本社に入社することになりました。私は皆様には初のお目見得であります。それと同時に私は社会といふものに初めて出会つたわけです。

私は長い間の学生生活を初めて脱したのです。学生時代の閑暇な日にはつくづくと疲労を感じました。奮闘努力、額に汗して働くといふことはどんなに愉快なことだらうと思つてゐました。その通り私は今非常に清々しい思ひで事に当つて居ります。

然し私は未だ何の経験も持たぬ者です。こゝしばしは諸先生方の御指導と諸君の御同情とに依り、近き将来には充分皆様へ御満足を与ふるだけの素養をつくらむことを期して居ります。

銀座の月

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