TRENDIA CLASSIC
手紙
牧野信一
1 / 3
お手紙拝見。面白い手紙だつたよ。あれだけ能弁な手紙が書けながら、まつたく君の々たる気焔には寧ろ小生は怖れを覚ゆるのであるが、それで、何うして、「哲人の石」の続稿がつゞけられないのか、不思議と思ふ。昨夜も小生は、あの君の作品を、三人の友達に向つて、声をあげて披露したところが、大かつさい――そして皆々感嘆絶賞の唸りをあげて、ひたすらその続稿の到来を待つばかりであると云ふではないか。そこで小生は叫んだのである。では諸君拙者が「哲人の石」の作者に書き送らうよ。
「余輩が希望中の最大の希望は――」
と――。これは、第一章フアウストの独言から、第三章グレツチエンの物語までを書いて、がつくりしてしまつた「フアウスト」の作者が、四ヶ年間の断筆苦悩の上句、一七九四年となつてワイマールに居を移した時に、シラアが彼に書き贈つた手紙の一節なんだが。
「……希望は、貴下がフアウストの続稿を拝読いたしたしとの他に今や何ものも無之御座候。ハーキユレーズの立像は彫刻界の白眉と称へられながらも、惜むらくはその頭部を欠き居り候ことかへすがへすも残念の儀と存ぜられ候はずや。恰も貴下のフアウストも、このまゝに放擲なさるゝならばハーキユレーズの立像たるの難を免れまじくと……」
こゝで小生達は声をあげて大きにわらつたよ。「フアウストの続稿」を「哲人の石」と置き換へて、あいつに申し送らうではないか――といふ騒ぎになつたんだもの。
続いて、
牧野信一の他の作品
TRENDIA CLASSIC
今年発表の作品
牧野信一
今年発表の作品
牧野信一 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
〔作者の言分〕
牧野信一
〔作者の言分〕
牧野信一 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
自己紹介
牧野信一
自己紹介
牧野信一 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
十年ひと昔
牧野信一
十年ひと昔
牧野信一 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
昭和十年度に於
いて最も印象に
残つたもの
牧野信一
昭和十年度に於いて最も印象に残つたもの
牧野信一 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
昭和四年に発表
せる創作・評論
に就て
牧野信一
昭和四年に発表せる創作・評論に就て
牧野信一 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
処女作の新春
牧野信一
処女作の新春
牧野信一 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
推奨する新人
牧野信一
推奨する新人
牧野信一 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
一九三二年に計
劃する
牧野信一
一九三二年に計劃する
牧野信一 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
一九三〇年型
牧野信一
一九三〇年型
牧野信一 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
〔同人雑記〕
牧野信一
〔同人雑記〕
牧野信一 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
南風譜・梗概
牧野信一
南風譜・梗概
牧野信一 ・ 約1分