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TORENDIA

ひとりごと

本文約3,400字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

度重なる酒の失敗に苦悩し、断酒を誓う「俺」の独白を中心に綴る。かつて友人たちと夜の街を彷徨い、「アザミ」という人物を探し求めた際、同行していた「自然と純粋」の著者の言動が印象に残る。「俺」は自分の泥酔した姿を受け入れ、慈しんでくれたその人物への敬意と、結果的に彼に心奪われたアザミとの複雑な記憶を振り返る。酒に溺れる自身の醜さと、芸術の道を歩む知的な友人の対比を通して、ある時期の追憶と心情を吐露する。

牧野信一

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🎧 ひとりごと / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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(十月十六日)

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きのふ、おとゝひ、さきおとゝひ――と、あゝ、何といふ浅ましさであらう、嫌はれ、軽蔑され、憎がられて、ウマクもない酒をのんでの気違騒ぎ、あゝ、もう厭だ、断然、酒は御免だ。ペンを執らうにも、体全体がガタ/\とふるへてゐて、一向に埒はあかぬ。

メフイストフエレス「先づ第一に飲助達に御紹介申しませう。さうするとあなたは必ず此世は大変簡単に渡られるものだといふ合点がゆくに違ひない。奴等と来たら毎日毎日お祭り騒ぎの大浮れで、恰も猫が自分の尻尾に戯れまはるかのやうに、少しばかりの頓智に自惚れて狭いところをぐる/\廻つて居るのです。訴へるほどの頭痛でもない限り、酒場の亭主に信用のある限りは、何の苦労もなくあゝした態の大浮れです。」

これはメフイストがフアウストに酒場の学生を紹介する野暮な科白であるが、俺は失敗してはならないと思ふ酒の場合には、そつとこいつを思ひ出して要心するのだが、うつかりと、また大失敗を演じてしまつた。凡そ俺は知る限りの酒客の中で斯んな科白を投げられて適当と思ふ人物を発見したためしはないのであるが、たつたひとり俺だけは、この言葉に厭といふほど打ちのめされる思ひがするのが常例なのだ。あの時酒場のジーベルやアルトマイエルは、メフイストの科白に憤慨をして決闘を申し込んだが、俺にはそんな生気が皆無で、後悔と憂鬱ばかりなんだから悲惨だ。俺も盃を執つて以来、指折り数えて見れば、はや十余年、――嫌はれ、軽蔑され、憎がられて十余年、友達に、恋人に、そして親に――。

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