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TORENDIA

美智子と日曜日の朝の話

本文約3,000字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

日曜の朝、母に何かをねだる従妹の美智子と、それを不機嫌に見守る語り手の順太郎。順太郎は前の晩、自分の机で寝込んでいた美智子の日記を覗き見し、そこに書かれていた自分への身勝手な記述を根に持っていた。やがて母のとりなしで順太郎は美智子の買い物に付き添うよう求められ、反発しながらも、二人が出かけた後に日記の続きを読もうと企てる。穏やかな日曜の朝を舞台に、彼らの心理的な駆け引きや複雑な感情をユーモラスに描く。

牧野信一

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🎧 美智子と日曜日の朝の話 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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日曜の朝でした。――「稀にはお母様のお手伝ひをしたら、」とお母様はちよつと機嫌の悪い顔をなさいましたので、美智子は、

「だつてお母様……」と、あべこべに不機嫌な顔をして、「だつて……だつて……」と、わけのわからない弁解を示して、おさげに結むだリボンを前に廻して、それをもてあそびながら、もう一遍「だつて……」と云ひました。

「そら始つた、こんな時に限つて勉強なんでせう。」

「だつて……」

「勉強なの?」

斯うお母様に先を越されてしまふと、美智子は更に弱つてしまひました。「お母様は何んてうまいことをおつしやるんでせう。」と思つた美智子は、もうそのお母様の今の言葉でムツとしてしまひました。――あゝ美智子は何といふわが儘な子でせう。それはお母様のおつしやり方も少し皮肉に過ぎた形もないではありませんが、兎に角美智子はお母様のお手伝ひは勿論、勉強をしようなんて意思は毛頭なかつたのですもの。

私? 私ですか? さあ私は、この二人のどつちの味方になるでせう? 少し考へる時間を与へて下さい。

私にも、美智子の母の心持はよく解ります――私だつて斯う見えても、もう一人前の大人ですから、さつき、「あゝ美智子といふ子は何といふ我が儘な子でせう。」なんて慨嘆に似た声を出して見たのです。ところがこの私――大人とは云ふものゝまだ学生時代の夢から脱けることの出来ないでゐる大人なのですから、何の見得もなく正直に、私のこの場合の感情を表明したならば、「美智子、怒れ怒れ。」といふ気持も多分にあつたらうと思ひます。

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