香水の虹
本文約3,400字 ・ 読了時間 約7分
あらすじ(AIが作成しました)
嫁いだ姉からの連絡が滞ることに寂しさと恨めしさを募らせるみつ子は、母から姉が病気であることを告げられる。自分のわがままさを恥じたみつ子は、京都にいる姉のもとへ行こうと決意する。贈られた香水でカーネーションを彩り、日光の中で虹を見つけた瞬間、姉を想う不安と愛情の間で揺れ動く少女の繊細な心情を描く。
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窓帷をあけて、みつ子は窓から庭を見降した。やはらかな朝の日射が、ふかぶかと花壇の草花にふりそゝいでゐる。
姉はカーネーシヨンの花が好きだつた。花壇の隅に美しく咲き誇つてゐる桃色の花を眺めながら、みつ子は姉のことをしきりに想ひつゞけた。きらきらと映へた外光はもの懐しく流れてゐる。
姉様がお嫁に行つてしまつてから、もう一年たつたのだ。みつ子は今更のやうにそんなことを考へた。行つた当座は少くも、一週に一度は必ず手紙を寄越したけれど、それもいつの間にか怠り勝になつたと見へて……。
「あゝさうだ。」と、みつ子は恰も突然何かを見出したやうに点頭いた。……「ふた月ばかり前に絵葉書をたつた一枚寄したきりなんだ。」
今更そんなことは考へて見る程のこともないのだが、ふとさう想ひ出して見ると、みつ子は何だか姉が恨めしく思はれてならなかつた。別れるとき、あんなにも堅く、ふたりで涙をこぼして約束したにもかゝはらず……「お姉様もずゐぶんだわ!」とみつ子は思はずには居られなかつた。
お姉様が居なくなつたら、此方はどんなに淋しいか? 私はどんなにつまらないか? 夫等のことは姉様の方が余程よく承知してゐる筈なのに――等とみつ子は、夫から夫へと、とりとめもなく姉の幻を追つてゐるうちに、いつか涙が頬を伝ひ初めてゐたのに、自分は気が付かなかつた。
みつ子は気がくしや/\してしまつて、じれつたさうに窓際を離れた。さうしてソファの中にぐつたりと身を落した。幾らでも泣けさうな気がする。無暗に口惜しくてたまらなかつた。