TRENDIA CLASSIC
知的作用と感情
と
増田惟茂
1 / 5
知的作用について吾々は二つの方面を區別する事が出來る。一つは働き、又は機能であつて、他は意識内容である。見る、聞く等の樣な知覺の働は前者であり、色、形、音等感覺とか知覺表象とか云はれるものは後者である。想起、想像、思考等は前者であり、記憶像、想像に浮べるもの即ち想像表象、概念等は後者である。
其内前者即ち心的働きの方は無視される傾がある。私はこれを心的働きの自己無視の傾向と呼んで居る。吾々が知覺する時、吾々の意識に表はれるものは色や形や音或は其複合體である。「意識に表はれる」などと云ふのは反省の結果であつて、素朴的な經驗に於いては色や形や音等がそこに在るのである。知覺の働きを離れて、或はそれが無視せられて、色や形等が只對象としてそこに見出されるのである。