光る生物
本文約6,900字 ・ 読了時間 約14分
あらすじ(AIが作成しました)
山や海に出会う不思議な火の正体を科学的に解明するため、光る動植物の生態を論じる。本書は、菌類、バクテリア、原生動物、節足動物、魚類など、世界中で確認されている発光生物を紹介し、これらが世間で怪火や人魂として迷信視されている現象の現実的な根拠であることを説く。著者は、科学的観察を通じて神秘的な怪異の正体を見極め、自然界における発光現象の仕組みと実態を平易に解説する。
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一 序言
光る生物と言へば又、例の『不知火』の話だと早合點をする人があるかも知れない。しかし所謂『不知火』の話は、あとで精しく書く。こゝでは已に學者及び世人に知られてる動植物のことを書いてみたいと思ふ。
と言ふのはこれから夏になれば、山か海に出掛ける人々が多くなる。それで夜中の散歩に、人魂、狐火、さては鬼火等に出會ふ人があるかも分らない。もしあつたら一つ度胸を据へて、冷靜に觀察してもらいたい。さうすれば案外な火の正體が發見されて、さしも不思議な『怪火』も、極めて平凡なものだといふことが分るだらうと思ふ。だからその案内のために私は、光る生物の話をかいてみたい。
所が次下に記す光る生物の中で、私の知つてる動物は極めて少い。陸の動物では先づ螢、海の動物では一二の原生動物、水母、きいとぷてらす、海螢、蝦、螢烏賊、裸鰯位なものだ。それ以外の動植物は總て、色々な文献から請賣する。
その文献の中で最も該博を極めたのは、流石に獨逸のマンゴールド(一九一〇)の書いたものだ。その中には六百四十九の文献が列べてある。それから又佛蘭西のデユボアー(一九一四)の書いた本がある。デユボアーは動物發光物質の獨創的研究者として第一人者だ。米國のハァヴエー(一九二〇)も本を書いてゐる。これにも二百九十九の文献が引合に出てゐる。しかしマンゴールドからの借物が大分あるらしい。
二 光る植物
(一)光る藻類 先づ光る植物から始める。光る植物は餘り多くない。最も原始的のものでは藻類に青緑藻[#「青緑藻」は底本では「青縁藻」]、緑藻[#「緑藻」は底本では「縁藻」]、褐藻、赤藻の四種があるさうだ。序に言つて置きたいのは、植物學者の所謂『光る藻』だ。その名で考へてみれば、藻が發光するやうだが、あれは全く發光するのでない。その球状の細胞が光を反射するのだ。だから全く『光る藻』でない。實は反射藻だ。しかもそれが何時でも反射するといふ譯でなくて、全く反射しない時があるから面白い。