TRENDIA CLASSIC
「ソーンダイク
博士」序文
リチャード・オースチン・フリーマン Richard Austin Freeman
1 / 2
私はこの作品集のなかの作品を、「倒叙小説」と「直接小説」の二つに分けたが、この分類のしかたについては、一口いっとかなければならない。
もともと、推理小説というものは、興味の中心が知的であるという点で、ほかのいっさいの小説とちがうのである。むろん、推理小説のなかにも、感情だとか、劇的な行動だとか、ユーモアだとか、哀感だとか、恋愛だとかの要素はふくまれているだろうが、推理小説ではそんなものはアクセサリー的存在にすぎないので、よしんば、そんなものをかなぐりすてたとしても、本質的興味は、すこしも損われないのである。
では、推理小説で必要欠くべからざるものは、いったいなんであるかといえば、それは謎とその解決であって、それが賢明な読者に、知的体操とでもいうべき快感を味わわせるのである。
だが、その快感を味わわせるためには、推理小説はつぎの三つの条件をそなえていなければならぬ。
(一) その謎は、当らずといえども遠からずという程度に、読者にもすこしは解決できるように提出されなければならない。
(二) 探偵の口をかりて説明する作者の解決は、誰にでもうなずける、完全で、決定的なものでなければならぬ。
(三) 推理の材料を読者にかくしてはならない。解決を説明するまえに、あらゆる持札を、全部正直にテーブルのうえに並べなければならない。