「ソーンダイク博士」序文
本文約1,200字 ・ 読了時間 約3分
あらすじ(AIが作成しました)
推理小説の執筆をめぐり、謎とその解決に必要な三つの条件を考察する。特に、読者が犯罪の全貌を知った上で、探偵が事実に迫る過程を追う倒叙小説という手法の有効性を論じる。読者に対し、作者とともに犯罪を見守り、証拠の価値を再考させることで知的興奮を喚起する試みについて綴り、自身が手がけた作品における犯罪編と推理編の構成について解説する。
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私はこの作品集のなかの作品を、「倒叙小説」と「直接小説」の二つに分けたが、この分類のしかたについては、一口いっとかなければならない。
もともと、推理小説というものは、興味の中心が知的であるという点で、ほかのいっさいの小説とちがうのである。むろん、推理小説のなかにも、感情だとか、劇的な行動だとか、ユーモアだとか、哀感だとか、恋愛だとかの要素はふくまれているだろうが、推理小説ではそんなものはアクセサリー的存在にすぎないので、よしんば、そんなものをかなぐりすてたとしても、本質的興味は、すこしも損われないのである。
では、推理小説で必要欠くべからざるものは、いったいなんであるかといえば、それは謎とその解決であって、それが賢明な読者に、知的体操とでもいうべき快感を味わわせるのである。
だが、その快感を味わわせるためには、推理小説はつぎの三つの条件をそなえていなければならぬ。
(一) その謎は、当らずといえども遠からずという程度に、読者にもすこしは解決できるように提出されなければならない。
(二) 探偵の口をかりて説明する作者の解決は、誰にでもうなずける、完全で、決定的なものでなければならぬ。
(三) 推理の材料を読者にかくしてはならない。解決を説明するまえに、あらゆる持札を、全部正直にテーブルのうえに並べなければならない。