一、櫻島の地理 【湧出年代に關する舊記】
櫻島は鹿兒島縣鹿兒島郡に屬し、鹿兒島市の東約一里錦江灣頭に蹲踞せる一火山島にして、風光明媚を以て名あり、其海中より湧出したる年代に關しては史上傳ふる所によれば靈龜四年と[#「靈龜四年と」はママ]云ひ、或は養老二年と云ひ、或は和銅元年と云ひ、或は天平寳字八年と云ひ諸説紛々として一定せず、顧ふに斯くの如き火山島は决して單に一回の噴出によりて成りたるものには非ずして、前記數回の大噴火によりて大成したるものなるべし。
【櫻島の各部落】
島は略々圓形を爲し、周回九里三十一町、東西櫻島の兩村あり、西櫻島村には赤水、横山、小池、赤生原、武、藤野、松浦、西道、二俣、白濱の十大字あり、東櫻島村には野尻、湯之、古里、有、脇、瀬戸、黒神、高免の八大字あり、大正二年度に於て戸數三千百三十五戸、人口二萬一千九百六十六人を有せり。
【櫻島の地形】
櫻島の地形は大體に於て整然たる截頭圓錐状を呈し、遠く裾野を引き、緩斜面を以て錦江灣に臨み、村落は何れも海岸に發達せり、山頂は略島の中央に位し三峯より成り、何れも圓形又は橢圓形の火口を有せり、北にあるを北嶽(海拔千百三十三米突)南にあるを南嶽(海拔千〇六十九米突)中央なるを兩中(海拔千百〇五米突)と云ふ、平時多少の噴烟ありしは南嶽にして、兩中には水を湛へたり。
全山輝石安山岩及び其集塊岩より成り、中腹以下は大部火山灰及び灰石の被覆する所となる、只西方の裾野に卓子状を爲せる城山(俗稱袴腰)は凝灰集塊岩より成り櫻島本體と其成立を異にせり。
櫻島の海岸には往々岩骨峩々として削壁を爲せる所あり、是昔時の熔岩流の末端にして、黒神村の北方に突出せる大燃崎、野尻、持木兩部落の間なる燃崎、湯之、古里兩部落の間にある觀音崎及び其東方湯の濱の間に在る辰崎は何れも文明年度の迸發に係る熔岩流にして、東北海岸高免の東なる西迫鼻より浦の前に至る間は安永熔岩流の末端なり。