忘られぬお国言葉
本文約2,000字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
鳥取県の寒村で育った著者が、故郷の久古方言を交えた帰郷者との会話や、帰郷した二等兵の滑稽な体験談を綴る。方言に宿る素朴な温かさに触れつつ、地域に残る「つかアさい」といった言葉が古典語の変形であることを論じる。標準語の普及により失われゆく方言の価値を再考し、長い年月を経て育まれてきた郷土の言葉を大切に守り続けたいという心情を明かす。
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○「大山にや、雪が降つたかしらん、お宮の銀杏の葉がフラフラふる頃になあと大山にや雪がおりるけんなア」△「シェンセイは久古言葉をようおぼえちよんなはあますなア」○「ようおぼえちようわい、大山の麓ほどええとかアないけん。ところでお前パーマをかけたなア、嫁さんに貰ひてががいにああちゆうけんなア、えしこやれよ」△「嫁さんにやいきましェん」○「うそつけ、嫁さんに行きたうて行きたうてどげんならんちゆうて顔に書いたる。子供が三人出来たらやつて来いよ。わすも元気でまつちようけんなア」△「嫁さんのこたアこらへてつかアさい」○「はづかすがつちようなア、いんだら手紙ごしないよ」
鳥取県西部の出雲方言混入、小生三十年ばかり郷里に帰らず、去年中学卒業の某女見習に上京す、このたび帰国するに当りての会話。久古は部落名。
○「大山には、雪が降つたらうか、神社の銀杏の葉がヒラヒラ散る頃になると大山には雪が下の方まで降つて来るからね」△「先生は久古の言葉をよく覚えてをられますね」○「よく覚えてゐるとも、大山の麓ほどよい所はないからね。ところで君パーマネントをかけたね、嫁さんに貰ひ手がたくさんあるといふ噂だからね、うまい具合にやれよ」△「私は結婚しません」○「うそをつきなさんな。結婚したくてたまらんと顔に書いてあるぢやないか。子供が三人出来たら東京にやつて来なさい。わたしも元気で待つてゐるからね」△「ひやかすことは許して下さい」○「恥かしがつてるね。国に帰つたら手紙をくれるんだぞ」