あつい国ぐにでは、お日さまが、やきつくように強く照りつけます。そこではたれでも、マホガニ色に、赤黒くやけます。どうして、そのなかでも、ごくあつい国では、ほんものの黒んぼ色にやけてしまうのです。
ところが、こんど、寒い北の国から、ひとりの学者が、そういうあつい国へ、そんなつもりではなく出てきました。この人は国にいるじぶんの気で、こちらにきても、ついそこらをぶらつくことができるつもりでいました。でもさっそく、その考えはかえて、この人も、この国のせけんなみに、やはりじっとしていなければなりませんでした。どこの家も、それは、窓も戸も、まる一日しめきりで、中にいる人は、ねているのか、どこかよそへ出ているとしかおもえないようでした。この人の下宿している高いたてもののつづきのせまい通りは、おまけに朝から晩まで、日がかんかんてりつけるようなぐあいにできていて、これはまったくたまらないことでした。
さて、さむい国からきた学者は、年は若いし、りこうな人でしたが、でもまる一日、にえたぎっているおかまの中にすわっているようで、これにはまったくよわりきって、げっそりやせてしまいました。その影までが、ちぢこまって、国にいたじぶんから見ると、ずっと小さくなりましたが、お日さまには、影までいじめつけられたのです。――で、やっと晩になって、お日さまが沈むと、人も影もはじめていきをふき返すようでした。さて、あかりがへやのなかにはいってくると、さっそく影はずんずんのびて、天井までつきぬけるほどたかくなります。それはまったく見ているとおもしろいようでした。影は元気をとりかえすつもりか、のびられるだけたかく、せいのびするように見えました。学者は、露台へ出ると、のびをひとつしました。きれいな大空の上に、星が出てきて、やっと生きかえったようにおもいました。町じゅうのバルコニにも――あつい国ぐにでは、窓ごとにバルコニがついているのですが、――みんなが新しい空気をすいに出てきました。