はしがき
入門書が要求されているということで、本書ができたのであるが、しかし「政治学入門」とはそもそもどう理解されたらよいものであろうか。それは政治学の方法論を説き、政治学の諸文献を解説したようなものなのであろうか。それとも対立しているいろいろの学説を並べ、著者の主張はなるべく出さないように書いたもののことであろうか。それともまた政治学の全領域を簡単に平易に圧縮したもののことであろうか。
これらのいろいろの解釈が可能であると思われるが、著者は本書ではそれを、政治現象の基本的な諸問題に一通りの究明を試み、より詳しい研究への示唆を与えるものと解釈した。その結果既に著者が『政治学』(勁草書房)で取扱っている基本的な部分を、多少順序を変えたり、加除したり、わかり易くして、繰返すような形にならざるを得なかったのである。より詳細な論述や文献については、右の書物について見て頂きたい。
いずれにしても入門書の最大の使命は、その学問への興味をそそることであろう。従って本書が政治学への興味を、一般の人々に抱かせることに失敗していたら、入門書としての価値はない。著者の恐れるのはそのことである。
一九五一年一月矢部貞治 [#改丁]
序言
すべて学問を論ずる場合には、認識の対象と方法を規定する方法論というものについて述べなければならないが、実際に学問をする場合正しい方法論は、その現象の実体を研究する道程の中から生れてくるもので、現象の実体も知らずに方法論に拘泥するのは、研究者が往々にして陥る邪道である。正しい方法論を求めることは、いつも念頭においていなければならぬが、しかしまず現象そのものの実体と取組むことが、とりわけ初めてその学問に志す者の正道である。だから本書では、方法論については取り立てて述べない。論述を進めてゆく間に、おのずからそれに触れるところがある。ここではただ政治学に接する場合の心構えについて、一言しておきたい。