TRENDIA CLASSIC
秘密礼拜式
アルジャナン・ブラックウッド
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絹商人のハリスは商用がすんで南ドイツを故国へ帰る途中、この際ひとつシュトラスブルクから登山鉄道に乗って、じつに三十年もの歳月を経たこんにち改めて母校を訪ねてみようと、とつぜん思いついた。そして、ジョン・サイレンス(沈黙のジョン)が全生涯で最も不思議な事件の一つに接したのは、セント・ポールズ・チャーチャードにあるハリス兄弟商会の若い方の協同経営者が起こした、この気紛れな衝動のおかげであった。というのは丁度そのときハリスはたまたま旅行用背嚢を背負って、そのおなじ地方の山々を徒歩で旅しており、こうして羅針盤の二つの違った方位から、期せずして二人の男がおなじ宿屋へ向かって進んでいたからである。
今なおその学校は、三十年のほとんどを儲けの多い絹の売買についやしてきたハリスの胸の奥底に、独特の影響のしるしを残しており、またおそらく彼には自覚されていないにせよ、その後の人生全般を強烈に色どっていた。学校はプロテスタントの小さな村落共同体の徹底的に宗教的な生活に従属しており、ハリスの父は、彼を十五歳のときにそこへ送ったのだった。ひとつには、絹の商売に必要なドイツ語を学ぶためであったし、ひとつは、当時の彼の精神と肉体がほかのなによりも必要としていた訓育が、そこでは厳格だったからであった。
生活はじじつ非常にきびしくて、若かったハリスには、それなりに有益だった。肉体にくわえる懲罰は知られていなかったけれども、なぜか本人の魂を誇り高く立たしめて受け入れさせるような心理的、精神的な矯正法があった。その方法は誤ちのよってきたる根本をついて、おまえの性格はこれで清められ強められるのであり、単に個人的報復の意味で痛めつけられているのではない、と少年に教えるものだった。