TRENDIA CLASSIC

“青い顔”

間所紗織

1 / 2

色は万国共通の言葉であり,どこの国へ行っても一目で理解し合えるものであると思っていましたのに,アメリカに留学した3年間に,外国人との色に対する感じ方の相違や習慣の相違にぶつかって,まごついたり,失敗したりしたことがありました。

アメリカに行ってしばらくの間,私は英語の学校に通いました。クラスには,ハンガリア人,ポーランド人,スペイン人,ユダヤ人等,世界中の様々の国から来た人達や,アメリカ人なのにスペイン語を話すプエルトリコ島からやって来た人達がまじって勉強していました。ある日,生徒の1人1人が順番に,与えられた単語を,他の単語を使って説明させられたことがありました。例えば,“誕生日”といわれたら“生れた日”と答え,“遠い”といわれたら“近くないこと”と簡単に答えればよいのです。私には“ペール PALE”(英和辞典をひくと先ず,青くなる―顔色が―の意と出ています)という単語があたりました。私はその単語の意味を辞書をひいてよく覚えていましたので“顔の色が青くなること”と自信たっぷりに答えました。すると,どうしたことか,クラスの中が何となく,ざわめいて,かすかな笑いの波がひろがって行くではありませんか。おだやかな先生はニコニコ微笑されながら“顔の色がホワイトになること”と訂正して下さいました。とっさに私は何のことか理解できなくてキョトンとしていましたが,やっとどうやら“ペール”という言葉の持っている“悪いしらせを受けてショックで青ざめる”という状態を“青”という色に感ずるのは日本人だけの独特の感覚で,外国人は“白くなる”と感ずるのだということが分りました。でも日本では“顔色が白くなる”といえば,女性が一生懸命クリームや化粧水でマッサージをして色白に美しくなるという意味になってしまいます。またアメリカ人は“青くなる”といった私の答えに,頬にベッタリとコバルトブルーやウルトラマリンの絵具をなすりつけたとんでもない顔を連想したのかも知れません。