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TORENDIA

四人

本文約15,000字 ・ 読了時間 約31分

あらすじ(AIが作成しました)

弟との喧嘩をきっかけに怒りと困惑を繰り返す俊一を描く。感情の起伏に翻弄されながらも、良子という人物を通じて自分の誤解を自覚する。日常の些細な出来事や内省的な独り言を通じて、自己嫌悪と他者への複雑な情愛が混在する男の姿を映し出す。最終的に、俊一は激しい雨の中、弟との関係や自身の心の移ろいを抱えたまま、一時的な感情の波を越えて歩み出す。この作品は、人間の脆さと日常の儚さを情緒豊かに綴る物語である。

芥川多加志

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突然、すこしおそろしい音がした。それから、どたんばたんといろ/\の物音が矢つぎ早にしたかと思ふと、しいんとなつた。

はじめにした声は、俊一がその弟を叱りつけたのである。何か気に障つたことがあつたのだらう。弟と向ひ合つてゐて、俊一は突然怒鳴つた。そして、ちよつと仁王様に似たやうな顔付になつたが、その自分の怒つた顔に自信がないために、どこか抜けたところがありはしないかといふ怖れに駆られた、といつた様子でつと立上り、ばり/\と襖を押し開けて奥の間の自分の室へ行かうとした。何か重大な国際会議の席上から脱退する悲壮な日本代表のやうな調子であつた。ばりつと風を巻いて室から出ようとする時、壁に吊してあつた瓢箪が落ちた。勿論、俊一は、あつといふ間にその瓢箪を片足あげてふんづけた。気が立つてゐる時は、かういふ品物を一気に粉みぢんにするのは気持のいいものだ。が、あれほど俊一が力を籠めたにも拘らず、瓢箪は潰れなかつた。のみならずつるりと外れて俊一の足をすくつたから、彼はよろよろとして、危くひつくりかへるところであつた。怒り心頭に発した彼は、勿論電光石火の敏速さを以て瓢箪を潰さんともう一度試みるべきであつたし、又試みようとしたのだが、具合の悪いことに瓢箪は彼の足からすこし離れたところに在つた。それで、不覚にも彼は躊躇してしまつたのである。ちよつとの間、彼は足を出したものかやめたものかとぴく/\させてゐた。彼は、はたから見てゐて、それがどのくらゐ哀れな可笑しさを唆るものであるかといふことに忽ち気がついた。その上、尚悪いことには、すこしも騒がず坐つたまゝであつた弟の方をちらりと見てしまつたのである。弟は、意地悪さうな目付をしてにやりと笑ひかけてゐた。

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