TRENDIA CLASSIC
新浦島
アアヴイング Washington Irving
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「サクソンの畏き神に縁みてぞ、けふをば『ヱンスデイ』といふ。その神見ませ、よるよりも暗くさびしき墳墓に、降りゆくまで我が守る宝といふは誠のみ。」 カアトライト ホトソンに沿うて登つて行つたことのある旅人は、屹度ケエツキルの山を覚えて居ませう。これはアパラツチエン山の幹から出た小枝で、遙に西に向つて、仰いで見れば、麓は河の畔に垂れて、巓は空に聳え、自づと近隣の地を支配して居ます。四季の変、天気の更は勿論、一日の中でも、一刻一刻に不思議にも色と形とを改めるは此山です。それだからこの山の見える処に住む女房は、皆なこれを晴雨計にします。好い天気の続くときは、青か紫かの衣を着て、その大胆らしい界の線を翳のない夕空に画き、時としては、近き傍の森には、雲も烟も見えぬに、その巓は、鼠色の霧の環を掛けられ、西山に這入り掛つた夕日の、最後の光に触れて、凱旋の人の戴く冠の様に光り輝きます。
此奇怪な山の麓で、旅人はある村から立ち騰る、弱々しい烟を見ましたらう。丁度あの晴れた空の青「インキ」が、近い林の緑色に移り行く所で、木の間からちら/\と屋根の見える村です。この村は小い、古風な村です。それも尤も、むかし和蘭陀の移住民が、当時善政の聞えのあつたペエテル、ストユイヱサント(渠は無窮の平和に息め)の時代に建てたのだから。四五年前までは、まだ和蘭陀から持て来た、小い黄いろな煉化石で積み上げた、格子窓の附いた、屋根の正面に破風を造つた、その上に風の嚮きを知らする鶏が立つて居る家が、沢山残つて居ました。