TRENDIA CLASSIC
猟人
津村信夫
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鉄砲打ちと云ふものには、よく、秋の汽車の中で出会つた。赤ら顔で、大柄な、さうして大抵、沈黙勝ちな人が多い。
三等寝台のあつた頃だ。
初冬の寒い夜更け、信越線の或る駅から、上り列車に乗り込むと、私の座席に、鳥打帽を被つた二人の男が坐つてゐた。
一目見てすぐ猟人だとわかつたが、夥しい獲物を携へてゐた。さうして、その獲物の鳥の、足や羽根には、ところどころ雪粉がついてゐた。
二人は向ひ合つてゐるが、別に、話をしてゐるのでもない、只どちらかの顔に、時々満足らしい微笑が浮ぶ。
「どうれ、寝るとしようか」
やゝたつて、一人が云つた。相手は、軽くうなづいた。
多分、今日一日中、吹雪の中を信越の国境ひで獲物を追つてゐたのだらう、私はさう判断した。
何気なく、「見事な鳥ですね、それはなんですか」と私は話しかけた。すると、二人はたいへん不機嫌な顔になつた、さうして、一人の男が、「山鳥ですよ」と吐き出すやうに答へた。それはまるで怒つたやうな声であつた。それでゐて、別に人に悪い感じを与へるといふのでもなかつた。
私は下のベツドにやすんだ。男達は、もう一本紙巻煙草を根もとまで、美味さうに吸つてから、獲物を大切さうに提げて寝台の小さな梯子を登つて行つた。
目をつむつてからも、私は何故か、上に寝てゐる猟人と、その獲物のことが気になつた。あの氷漬けになつたやうな鳥達が、私の夢の中まで忍び込んで来るやうに思はれた。
戸隠ゆきの汽車の中で、うとうとしてゐると、私は肩をたゝかれた。渋ぶさうに目をあけると、私を呼び起した男は目の前に立つてゐた。赤ら顔の髭のある人であつた。背も随分高かつた。「すみませんね」と低いが、よく通る声で云つた。