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TORENDIA

樹木とその葉

本文約6,400字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

沼津に住む著者は、日頃仰ぎ見る愛鷹山へ登り、そこから富士山を眺めようと計画する。土地の人々に制止されつつも、書生と共に困難な登路を辿り、鬱蒼とした森を抜けて頂上に至る。本書はこの体験記を中心に、天城山や伊豆の西海岸など、各地の山や海から眺めた富士山の多様な表情と、その風景に対する深い感懐を綴る。

若山牧水

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🎧 樹木とその葉 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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駿河なる沼津より見れば富士が嶺の前に垣なせる愛鷹の山

東海道線御殿場驛から五六里に亙る裾野を走り下つて三島驛に出る。そして海に近い平地を沼津から原驛へと走る間、汽車の右手の空におほらかにこの愛鷹山が仰がるる。謂はば蒲鉾形の、他奇ない山であるが、その峯の眞上に富士山が窺いてゐる。

いま私の借りて住んでゐる家からは先づ眞正面に愛鷹山が見え、その上に富士が仰がるゝ。富士といふと或る人々からは如何にも月並な、安瀬戸物か團扇の繪にしかふさはない山の樣に言はれないでもないが、この沼津に移住して以來、毎日仰いで見てゐると、なか/\さう簡單に言ひのけられない複雜な微妙さをこの山の持つてゐるのを感ぜずにはゐられなくなつてゐる。雲や日光やまたは朝夕四季の影響が實に微妙にこの單純な山の姿に表はれて、刻々と移り變る表情の豐かさは、見てゐて次第にこの山に對する親しさを増してゆくのだ。

一體に流行を忌む心は、もう日本アルプスもいやだし、富士登山も唯だ苦笑にしか値しなかつた。與謝野寛さんだかゞ歌つた「富士が嶺はをみなも登り水無月の氷の上に尿垂るてふ」といふ感がしてならなかつた。それで今まで頑固にもこの名山に登ることをしなかつたが、こちらに來てこの山に親しんで見ると、さうばかりも言へなくなり、この夏は是非二三の友人を誘つて登つてゆき度い希望を抱くに到つてゐる。

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