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TORENDIA

草藪

本文約14,600字 ・ 読了時間 約30分

あらすじ(AIが作成しました)

長期の療養生活を送る主人公は、新しく転室した病棟の隣のベッドに、坂上とよ子という若い娘が入院してきたことを機に、彼女と親しくなる。とよ子は親族の冷遇や生活の悩みを抱えながら、次第に病状を悪化させていく。病院という閉鎖された空間の中で、主人公はとよ子に付き添う家族の冷酷な態度や、病に侵された娘の孤独な内面に触れ、回復へと向かう自身の心身と対照的な彼女の最期の時を見守る。

鷹野つぎ

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附添婦と別れて一人のベッドに数日過した私は、一時多数病室に半月ほど過したのちまた転室した。今度は今までの南窓と対い合って眺められていた向う側の、平家建の二人詰の室のならんだ病棟だった。看護婦さんが寝台車を階段の下まで廻してくれ、それに見知りの附添婦さんなども来て手伝ってくれて、私の身のまわりの物を車に積んだ。最後に私は単衣に羽織を重ねて、片手にカーネーションの花瓶など持って仮住居のベッドの多数部屋を出たが、もう季節は七月近くに来ていた。

幾つも続いた共同病室の前の長い廊下をすぎて階下へ下りると、涼しい飲料水に感じるような、ひやりとした空気に私の身は包まれた。一年近く二階にばかり住んでいた私には、地に近く、花壇や植込を通うてくる風が、そんな風に清冽に感じられたのであった。

私は香ぐわしい空気を呼吸しながら、レントゲン室や、医務室の渡廊下を過ぎ左折して、しめやかな気の湛うている第二病棟の廊下を踏んだ。

今度の室は特殊有料者向きに設けられた八畳ほどの広さで、二つならんだベッドの間には衝立が境いしていた。私には窓が中庭に面した方のベッドに定められたが、床頭台の傍らには洋風の戸棚なども置かれ、病院用の器具も新らしくて、すべて立派な感じがした。

私は看護婦さんの手助けでベッドに身のまわりのものを収めると、何よりもまず隣りの空いたベッドのわきを通って、そちらの外を眺めてみた。敷居から一段低くなって病室の前は広いテレスになって居り、藤の安臥椅子が、いくつとなく、棟のテレスを蓋うた深い廂の下の、はずれからはずれまでとびとびに置いてあった。

テレスに私は下りてすぐ前の椅子の一つに腰かけ、あたりを眺めた。病院境いの鉄柵までには夾竹桃などの咲いた芝生があって、テレスに添うては篠懸の一列の木かげが、あたりを青く染めたように、濶い葉を繁らせていた。

私はおどろくばかり豊富な、土や草の香いを吸い込んだ。二階から眺めたあの南窓の風物よりも、ここでは地上の多くのものが視野にはいった。

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