TRENDIA CLASSIC
源氏物語
紫式部
1 / 51
ありし世の霧来て袖を濡らしけりわり なけれども宇治近づけば (晶子)
源右大将は常陸守の養女に興味は覚えながらも、しいて筑波の葉山繁山を分け入るのは軽々しいことと人の批議するのが思われ、自身でも恥ずかしい気のされる家であるために、はばかって手紙すら送りえずにいた。ただ弁の尼の所からは母の常陸夫人へ、姫君を妻に得たいと薫が熱心に望んでいることをたびたびほのめかして来るのであったが、真実の愛が姫に生じていることとも想像されず、薫のすぐれた人物であることは聞き知っていて、この縁談の受けられるほどの身の上であったならと悲観を母はするばかりであった。