本文へ移動
TORENDIA

源氏物語

本文約15,500字 ・ 読了時間 約32分

あらすじ(AIが作成しました)

桐壺の更衣は、帝の深い寵愛を受けるが、身分の低さや周囲の嫉妬から心身を消耗し、愛息である第二皇子を残してこの世を去る。母の死後、源氏の君と称されるようになった皇子は、その類まれな美貌と聡明さで周囲を魅了し成長する。元服を経て左大臣家の姫君を妻に迎えるが、源氏は亡き母の面影を重ねる藤壺の宮への思慕を抱き続け、帝の愛を受けながらも心に秘めた苦悩を抱えて宮中で過ごす。

紫式部

🎧 まだ音声版はありません

リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 20

紫のかがやく花と日の光思ひあはざる ことわりもなし      (晶子)

どの天皇様の御代であったか、女御とか更衣とかいわれる後宮がおおぜいいた中に、最上の貴族出身ではないが深い御愛寵を得ている人があった。最初から自分こそはという自信と、親兄弟の勢力に恃む所があって宮中にはいった女御たちからは失敬な女としてねたまれた。その人と同等、もしくはそれより地位の低い更衣たちはまして嫉妬の焔を燃やさないわけもなかった。夜の御殿の宿直所から退る朝、続いてその人ばかりが召される夜、目に見耳に聞いて口惜しがらせた恨みのせいもあったかからだが弱くなって、心細くなった更衣は多く実家へ下がっていがちということになると、いよいよ帝はこの人にばかり心をお引かれになるという御様子で、人が何と批評をしようともそれに御遠慮などというものがおできにならない。御聖徳を伝える歴史の上にも暗い影の一所残るようなことにもなりかねない状態になった。高官たちも殿上役人たちも困って、御覚醒になるのを期しながら、当分は見ぬ顔をしていたいという態度をとるほどの御寵愛ぶりであった。唐の国でもこの種類の寵姫、楊家の女の出現によって乱が醸されたなどと蔭ではいわれる。今やこの女性が一天下の煩いだとされるに至った。馬嵬の駅がいつ再現されるかもしれぬ。その人にとっては堪えがたいような苦しい雰囲気の中でも、ただ深い御愛情だけをたよりにして暮らしていた。父の大納言はもう故人であった。母の未亡人が生まれのよい見識のある女で、わが娘を現代に勢力のある派手な家の娘たちにひけをとらせないよき保護者たりえた。それでも大官の後援者を持たぬ更衣は、何かの場合にいつも心細い思いをするようだった。

紫式部の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本