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TORENDIA

子守つ子

本文約4,200字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

子守として働く少女バルカは、泣き止まない赤ん坊のゆり籠を揺らし、眠気と闘いながら過酷な日々を送っている。夜ごと訪れる幻影の中で父の死や貧しさを反芻する彼女は、昼間も休む間もなく続く親方やおかみさんからの命令に追われる。過労と疲労の極みにありながらも、再びゆり籠を揺らさなければならない閉塞的な日常と、安らぎを求める逃れられない眠りへの欲求を描く。

アントン・チエーホフ Anton Chehov

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🎧 子守つ子 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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夜、子守子のバルカは、きゝとれないくらゐの、ひくいこゑで、子守歌をうたひながら、赤ん坊のねてゐるゆり籠をゆすぶつてゐました。

「ねん/\よう。

ねん/\よう。」

神だなの前には、ランプが緑いろにともつてゐます。壁から壁へ、細いひもがかけわたしてあつて、赤ん坊の着物や、大きなズボンなどが、うす黒くぶらさがつてゐます。ランプのつるしてあるま上の天井が、まるく、大きく、緑いろにかゞやいて、赤ん坊の着物やズボンの影を、長く、ゆり籠の上や、うづくまつてゐるバルカの肩の上に、おとしてゐます。

火影がゆれると、天井のまるいあかるみやいろ/\なものゝ影が、まるで風にあふられたやうにゆらゆらします。部屋の中は息がつまるやうに静かで、スープと靴のにほひがしてゐます。

赤ん坊がひい/\泣きます。あんまり泣きに泣いて、もう声もかれ/″\になつてゐるのに、それでもまだ泣きやみません。いつになつたら泣きたりるのでせう。バルカはねむくて/\たまりません。

頭はたれ下り、頸はつッぱつて苦しくなり、まぶたも唇も、動かなくなりました。顔はひからびて、石のやうにこはゞつてゐます。頭が、まるでピンの頭ぐらゐにちゞこまつてしまつたやうな気がします。

「ねん/\よう。

ねん/\よう。」

バルカは、とぎれ/\にうたひました。そこいらでこほろぎがチル/\チル/\と鳴いてゐます。となりの部屋からは、親方とおかみさんのいびきがきこえます。

ランプがゆらぎました。緑いろのあかるみと物の影とが、あちこちと動きまはつて、バルカの動かない目の中に、そつとすべりこみました。すると、ねむりかけてゐるバルカの頭の中には、さま/″\なまぼろしがうかびました。――

空を、雲が赤ん坊のやうに泣きながら、きれ/″\になつてとんでいきます。と、風がふいて来て、雲がきえて、こんどは、どろ/\にぬかつた広い路がみえ出しました。路の両がはには、つめたいもやをとほして岡がみえます。不意に、だれだか、袋をしよつた、影のやうな人が、グシヤッとぬかるみでころびました。

「どうしたの?」とバルカがきくと、

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