てがみ
本文約3,700字 ・ 読了時間 約8分
あらすじ(AIが作成しました)
クリスマスの夜、靴屋の店へ奉公に出されている九歳の少年ユウコフは、唯一の頼りである田舎の雇い主マカリッチへ手紙を書き始める。親方から受ける過酷な労働や暴力、孤独な日々を綴り、自分を村へ連れ戻してほしいと切実に訴える。少年は書き上げた手紙を郵便箱へ投函し、手紙が届き、迎えが来ることを信じて眠りにつく。極寒のモスクワで懸命に生きる孤独な子供の切なる願いと、遠く離れた故郷への慕情を描く。
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ユウコフは年はまだやつと九つです。せんには、お母さんと一しよに、ゐなかの村のマカリッチさまといふ、だんなのうちにおいてもらつてゐました。お母さんはそのうちの女中になつて、はたらいてゐたのです。そのお母さんが死んでしまつたので、ユウコフもそのお家にゐられなくなり、人の世話で、三月まへから、この靴屋の店へ、奉公にはいつたのでした。
こよひはクリスマスの晩です。ユウコフは親方や兄弟子たちが、教会からかへつてくるまでは、どんなにおそくまでも、ねむらないで、まつてゐなければならないのです。ユウコフは一人ぼつちで、さびしくてたまらないので、戸だなから、そつと親方のインキつぼをもちだして、さきのさゝくれたペンで、しわくちやの紙へてがみをかきだしました。だれよりも大すきな、あのマカリッチのだんなへ出さうとおもひついたのです。
「コンスタンチン、マカリッチのだんなさま。」とユウコフは、くびをひねり/\かき出しました。
「だんなさまのところは、クリスマスでにぎやかでせう。神さまが、だんなさまに、どつさりいゝことを下さるやうにいのつてます。だつて、わたしには、お父つあんもお母さんもゐなくなつたから、あとは、たゞだんなさまだけです。」
ユウコフはこゝまでかくと、目をあげて、くらい窓を見上げました。ろうそくの、くらいあかりが、ガラスにぼんやりうつッてゐます。それをじつとみてゐると、マカリッチのだんなの姿が、ありありとガラスの中にうかび上つて来ました。
マカリッチのだんなは、年は六十五です。せいのひくい、やせた、それでゐてとても元気なおぢいさまです。いつもたのしさうににこ/\してばかりゐます。昼間は台所にねころんで、料理人をからかつたりしてゐますが、夜になると、大きな羊の毛皮の外とうにくるまつて、家畜の見まはりに出ていきます。だんなのうしろには、いつも、カシュタンカとエールといふ、二ひきの犬がついてゐます。