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TORENDIA

海

本文約2,500字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

庵での独り暮らしの様子を綴り、海への深い愛着とそこに重ね合わせる母親の慈愛について論じる。松籟が響く何もない庵で静かに時を過ごす著者は、深山には厳格な父親の気配を感じる一方、荒れる海にも母のような抱擁と慈悲を見出す。仏の慈悲にも通じるその海に心を寄せ、移ろいゆく雲や朝夕の光景に惹かれながら、流転の末に辿り着いた庵で海や雲と共に過ごす充実した日々の心境を静かに描き出している。

尾崎放哉

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🎧 海 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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庵に帰れば松籟颯々、雑草離々、至つてがらんとしたものであります。芭蕉が弟子の句空に送りました句に、「秋の色糠味噌壺も無かりけり」とあります。これは徒然草の中に、世捨人は浮世の妄愚を払ひ捨てゝ、糂汰瓶ひとつも持つまじく、と云ふ処から出て居るのださうでありますが、全くこの庵にも、糠味噌壺一つ無いのであります。縁を人に絶つて身を方外に遊ぶ、などと気取つて居るわけでは毛頭ありませんし、また、その柄でも勿論ないのでありますから、時々、ふとした調子で、自分はたつた一人なのかな、と云ふ感じに染々と襲はれることであります。八畳の座敷の南よりの、か細い一本の柱に、たつた一つの脊をよせかけて、其前に、お寺から拝借して来た小さい低い四角な机を一つ置いて、お天気のよい日でも、雨がしと/\降る日でも、風がざわ/\吹く日でも、一日中、朝から黙つて一人で座つて居ります。

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