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TORENDIA

石をしょわずに

本文約4,000字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

昭和二十二年、山村の小学校に勤める若き女性教師が淵に身を投げる。彼女は荒っぽい子どもたちのしつけや、教育方針をめぐる父兄との対立、そして職員室での孤立に深い悩みを抱えていた。本作は、この女性教師の悲劇を起点として、旧態依然とした学校組織や村の封建的な慣習のなかで苦闘する教師たちの実態を描き、民主的な教育環境を築くために必要な教師同士の連帯と自立した教育実践の在り方を論じる。

村山俊太郎

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🎧 石をしょわずに / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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昭和二十二年七月二十日の朝、T村小学校のわかい女教師が、通勤の途中にある淵に投身自殺をした。すがすがしい朝を、大きな石を身につけて、すきとおる山谷の淵の底に身を沈めた。十八年四月、村の高等科を卒えると、T町の実科高女校に入り、卒業した二十一年四月から隣村の小学校に助教として奉職していた。このわかい女教師は、わたくしの妻の教え子なので、時々わたくしの住まいにも訪ねてきて、よく教育のことなどを語りあった。それで妻からこのK子の死を知らされたとき、どうしても信じられないほど心のおどろきを感じたのだった。妻はその自殺の模様をかいつまんで話してから、

――子どもたちのけんかがもとで、有力な父母から、新教育なんていったって、しつけひとつできないじゃないかと言われたのがもとだって。

と死の原因についての評判をまとめて語ったあとで、

――けれど、そのほかに、新しい教育への苦しみと悩みがK子を死なせたのよ。

とわたくしの同意をもとめるようにいった。このことについては、つい一週間ばかり前にK子がわたくしの住まいを訪ねてきて、教育についての悩みを語りあった直後なので、何の無理もなく、わたくしは妻の意見に同意することができた。そしてK子が口ぐせのように、その妹に、

――お前は先生にだけはなるな。先生って、とてもむずかしいつらい苦しいものよ。

と語っていたということを妻からきいて、暗い気持ちになった。

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K子が妻を訪ねて、わたくしの住まいに来たのは、七月のはじめの日曜だった。妻の教え子であるO村の青年が、見事なさくらんぼをもって訪ねてきていた。この農民組合青年部で活躍しているわかい青年と対談しているところへ、K子も妻を訪ねてきたのだった。

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