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TORENDIA

永遠の夫

本文約190,900字 ・ 読了時間 約382分

あらすじ(AIが作成しました)

夏が訪れたペテルブルグで、領地訴訟のいざこざや神経症に悩むヴェリチャーニノフは、かつての知人であるパーヴェル・パーヴロヴィチと再会する。二人は過去の出来事を巡り、複雑な感情を抱えたまま奇妙な緊張関係の中に身を置くこととなる。本作は、再会をきっかけとして、対立する二人の男の心理と執拗なまでの心理的駆け引きを描き出す。

ドストエーフスキイ

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一 ヴェリチャーニノフ

夏が來たというのに、ヴェリチャーニノフは案に相違して、ペテルブルグに踏みとどまることになった。南ロシヤの旅行もおじゃんになったばかりか、事件はいつ片づくとも見えない始末だった。事件というのは領地に關する訴訟だったが、風向きはすこぶる思わしくなかった。つい三月ほど前までは、とても單純で、ほとんど議論の餘地もないものに見えていたのだったが、どうかした拍子にがらりと雲行きが變ってしまったのである。

『おまけにどうも、何もかも惡いほうへ變りだしやがって!』

とそんな文句を、ヴェリチャーニノフはさも忌々しそうに、よく獨り言にくり返すようになった。彼は腕利きの、報酬の高い、有名な辯護士をやとって、費用の點は少しも惜しまなかった。それでも、やはりもどかしく、信用の置けない氣持がして、自分までが事件に首をつっこむようになった。つまり書類を讀む、自分でも書く、そして大抵は辯護士の手で屑籠へ捨てられる。また裁判所から裁判所へ駈けずりってみたり、調査をしてみたりするのだったが、おそらくこれが、よほど事件の運びの邪魔になったのである。少なくも辯護士は苦情を鳴らして、彼を別莊へ敬遠しようとした。ところが彼のほうでは、別莊へ行くだけの決心さえつき兼ねたのである。ほこりっぽさ、蒸暑さ、神經をいらだたせるあのペテルブルグの白夜、――そうしたものを、彼はペテルブルグで滿喫していたわけなのだ。彼のアパートは大劇場の近所にあって、ついこのあいだ借りたばかりだったが、これも同じく失敗だった。まったく彼の言い草じゃないが、『何もかも巧く行かん!』なのである。彼のヒポコンデリーは、日ましにひどくなるばかりだった。とはいえこのヒポコンデリーの兆候は、だいぶ前からあるにはあったのである。

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