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TORENDIA

或新年の小説評

本文約4,300字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

新年や二月に発表された様々な文学作品に対し、著者である田山録弥が講評を行う。正宗白鳥の『催眠薬を飲むまで』や森鴎外の『高瀬舟』など多くの作品を取り上げ、観察や写生の手法、作者の表現意図、芸術性としての完成度について論じる。また、自作への批評に対する反論や、人間関係における孤独や家庭のあり方といった独自の考察も交え、当時の文壇における小説や戯曲、作者の姿勢を鋭く批評する。

田山録弥

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🎧 或新年の小説評 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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おくればせに新年と二月の小説を飛び/\に読んで見た。

正宗君の『催眠薬を飲むまで』は、またいつもの同じ題材だと思ひ/\読んで行つたが、最後の二頁に行つて、がらりと引くりかへされた。流石だと思つた。かういふ風に少年の自殺を見た形も面白いと思つた。たゞし、最後の二三の句に、少し色の濃すぎた、主観の言葉の入りすぎたところがあつて、やゝ自然らしい感じを傷つけたやうな気がした。『田舎者』は、旨くは書いてあるが、警句も沢山にあるが、一方の相手がイヤに超然としてゐるために――詳しく言へば、平行を保つてゐないために、単なる写生以上に芸術品らしいところが出て来なかつた。『姉の夢』は本がないので読まなかつた。

中村君の『人間の夜』にも矢張『田舎者』に見たやうな写生に堕したところがあつた。よくは書いてある。細い点にまで入つて行つて、観察、描写の上には非常な進境があるやうに思つたが、何うもかうした写生ばかりでは芸術として甚だ物足らない、もつと何かゞなければならないのではないかと思つた。

有島生馬君の作品は、今まで読んだことがなかつた。今度の『暴君へ』が始めてゞある。私は才の漲つた、割合に観察の細かい、気分の明るい感じを其処から得た。それに表現の方法などにも新しいところがあつた。たゞし、書く上に於て、かういふ書き方は非常に楽なものである。ある処では活動写真でも見てるやうな気がした。

高浜虚子氏の『落葉降る下にて』では、私は同じ年齢に共通したやうな共鳴を覚えた。よく書いてあると思つた。私などもかういふ風な心持を起したり感じを起したりすることはよくある。現に、私なども、かういふ点から人生を見るやうになつてゐる。しかし、この作は感想として、写生として面白いので、また意味があるので、芸術としては甚だ物足らないと思ふ。かういふ見方や心持が、他に入つて、他と自との交錯する上に完全に動いて行つて、それで出来たやうな作品を私は氏に期待したいと思つてゐる。

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