野の哄笑
本文約4,100字 ・ 読了時間 約9分
あらすじ(AIが作成しました)
村の老人与平次の葬列が、小暗い小径を抜けて耕野の道を進む。念仏衆が鉦を叩く単調な音が響く中、死者を送り出す参列者たちは次第に緊張を解き、与平次の生前の滑稽な言動や地獄へ行く先々を想像して語り合い始める。故人の陽気な人柄を偲び、あの世での珍妙な再会を空想しながら、一同は葬列であることを忘れたかのように大笑いを繰り返す。こうして笑いに包まれた行列は、いつしか目的地である火葬場へとたどり着く。
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型の如く、青竹につるした白張の提灯、紅白の造花の蓮華、紙に貼付けた菓子、雀の巣さながらの藁細工の容物に盛つた野だんご、ピカピカ磨きたてた真鍮の燭台、それから、大きな朱傘をさゝせた、着飾つた坊さん、跣の位牌持ち、柩、――生々しい赤い杉板で造つた四斗樽ほどの棺桶で、頭から白木綿で巻かれ、その上に、小さな印ばかりの天蓋が置かれてある。棺台に載せて、四人して担いだ。――そして、そのあとから、身寄りのもの、念仏衆、村のたれかれ、見物がてらの子守ツ子たちがぞろ/\と続いた。
チン! カン! ボン!
念仏衆の打ちならす小、中、大の鉦の音が静かに、哀しげに、そして、いかにも退屈さうに響いた。行列は、それに調子を合せてでもゐるかのやうに、のろ/\と、哀しげに、そしていかにも怠儀さうに進んだ。
誰もが、唖ででもあるやうに、重苦しく押黙つてゐた。
チン! カン! ボン!
たゞ、鉦の音だけが、間をおいては同じ調子で繰り返へされた。が、小暗い村の小径を離れて、広々とした耕野の道へ出た時、たうとう我慢がしきれなくなつたといつたやうに、誰かが、前の方で叫んだ。
「鉦を、もつとがつとに叩けや。」
と、これも、みんなに寛ぎを勧めでもするやうな、殊更らにおどけた調子で、少し離れたところから、ほかの者が、それにつけ加へた。
「ほんとによ、今度の仏は、大分耳が遠かつたんだから。聞えねえと悪い。」
チーン! カーン! ボーン!
「さうだ、さうだ。もつと、もつと。はゝゝゝ。」
「爺さんな、陰気ツ臭いのが何より嫌えだつて、いつも口癖のやうに云つてゐさしたつけよ。」と、今度は後の方で、誰か女の人が云つた。
「それに八十二だつて云や、年齢に不足はねえんだからの、まあ、目出度え方なんだ。」
「ほんだてば。」
「八十二でゐさしたつて、え?」
「あ、さうだ、と。」
「ほう、それにしちや、まあ、とんだ岩畳なもんだつたの! 仕事ぢや、何をやらしても若いもんと同じこんだつた。」
縛めからでも解かれたやうに、一同は急にくつろいで、陽気に、がやがやとしやべり出した。「やれやれ!」といつたやうに大きな吐息を洩すものさへあつた。