所有者
『万物は万人のものなり、 何人の私有すべきものに非ず』 この思想のいかに当然にして、 しかして美しくして、 しかして、 いかに遠く我らの相距りたることよ!
我らは何物をも持たず、 げに何物をも持たず、 街を歩みて何物の一つをも、 これを自由にし、使用し、消費する能わず、 石ころの一つにも、 一木の枝にも、 その所有主の名は刻さる。
げに我らは、 暖かなる日光に浴し、 空気をも(その清新なるものを)呼吸し能わず。
欲求
我等は、 やわらかなる臥床に寝んことを希い、 美食に飽きんことを希い、 贅沢なる居室に居らんことを希う者に非ず、 ただ我等の飢を満たさしめよ、 我等自ら作りたる米を食わしめよ、 その宏荘なる蔵に蓄積せる、饒多なる米を食わしめよ。
今
今こそ必要なれ、 今、 我らが敵は奸佞なる守旧派に非ずして、 遅疑と逡巡と、実に躊躇となり、 遷延こそ最も怖るべき敵なれ、 我らの為すべきは今、 すぐ、 今よりなり。
独立
K子よ、 君の母上は君が婚期を過ぎむやを案じ給えり、 ――もはや立派なる一人前の婦人と君はなり給えば――、 されど君は君自らの生活の料を得給うゆえに、 『この方が結句気楽なり』と、 我に語りしことも一再ならず、 君は静かに、 君が居給う所に居給えり、 君は安んじ、満ち給えり、 されど君が終日の労働を終えて帰り来れる時の、 その白き面ざしの なんぞしかく時折に淋しげなる。
“Bread for all”
世界には実に沢山のパンがある、 とても食いきれないほどある、 我らは実に富んでいる、 我らはみな平等にこのパンを食う権利を持っているのである、 それだのに、 なぜ飢えて死ぬ人があるのか、 それだのに、 なぜ痩せている子供があるのか、 それだのに、 なぜ泣いている婦人があるのか。
賃金制度