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TORENDIA

墓地

本文約560字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

郷里の村を見下ろす高台にある家の墓地へ、帰郷のたびに掃除に出かける習慣を持つ男がいる。荒れた墓地を整え、冷たい墓石に触れながら少年のような心持ちで過ごす時間は、都会で暮らす彼にとって特別な親しみがあった。ある夜、父との夕食の席で、父は隣の部落に新たな墓を造った親族の話を引き合いに出し、今の墓地の現状について含みのある言葉を口にする。伝統的な場所と変化する状況の間で揺れる心情を描き出す随筆である。

櫻間中庸

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🎧 墓地 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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郷里につくと、その日の中にか翌日の朝かには、きつと、家の墓地に鎌と笹掃木を手にして出かける。

それに義務を感じるといふのでもない。ただその墓地が村を南から北へ大膽に見下せる高さにあることがたまたま故郷に歸つた私に喜びを投げてくれるからだ。それがいつの間にか習慣といつたものになつてしまつたのであらう。

その度に墓地はむしやくしやとよもぎが生えてゐたり、山からころげ込んで來た岩のかけらがだらしなくころげてゐたり、墓の土臺石を埋めて腐れかゝつた落葉がぬばぬばと堆かくなつてゐたりする。

山肌はまる一日殆んど陽光を直接にうけないので墓石は七月でも死人の肌の感觸をうける。斯うした有樣が一入墓地の雰圍氣の感情を深くしてゐるこの山肌に、都會からの私は強い愛着、といふよりも親しみを覺える。

一通り掃除をすますと、何がなく、少年のやうに、何やら自分でもはつきりわからないことを口ごもり乍ら墓石の前にかゞみ込むのも習慣となつてゐる。

久しぶりの、父と茶碗を並べての夕飯であつた、母の心づくしは瀬戸内海の生のいゝ燒魚であつた。

父は盃を口に近づけ乍ら、うちの墓もその中に何とかしよう、あのまゝではと後をにごしてグツと喉に流し込むと千圓に近い金で大阪の伯父が隣り部落に立派な墓地を造つたことを語り、天氣のいゝ日に行つて見て來いとつけ加へた。

完

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