TRENDIA CLASSIC

湯川博士の受賞を祝す

長岡半太郎

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我邦では敗戰の創痍未だ癒えず、媾和條約未だ締結されず、國民は暗雲に鎖された氣持ちに包まれている際、湯川博士がノーベル賞を受けられた吉報に接したのは、黒雲の一隅から一條の日光が燦爛たる輝きを示した心地がして、專門家に限らず大衆に至るまで、歡聲をあげて喜びを同じくしました。しかしその喜びには、いろ/\の素因が伏在しています。單に世界で最も重きを置くノーベル賞が初めて本邦人に與えられたのを喜ぶ人もあり、或は久しく暗黒界に潜んでいた原子核を探求するに先鞭をつけたのは、黄色人の科學者であるにも拘らず受賞されたことを喜んだ人もあろう。或は永く神秘に付せられた原子核の研究が、これより益々發展して、獨り學問のみならず、これを文化開發の用に供せらるゝ時期の遠きにあらざるを豫想して、拍手した人もあつたろう。手を叩いて受賞の報知を迎えた大衆の感想を問わば、千差萬別でありましようが、皆喜びに滿ちたことは疑いを容れませぬ。

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