錢形平次捕物控
本文約10,500字 ・ 読了時間 約21分
あらすじ(AIが作成しました)
本郷の菊坂で遊んでいた子供五人が、突如として姿を消す。銭形平次は八五郎と共に捜査に乗り出し、現場周辺で怪しい動きを見せていた鋳掛屋や、古い土蔵に隠された旧大名家の財宝に辿り着く。遊びの最中に誤って蔵へ入り込んだ子供たちが、財宝の独占を企む側用人によって長持へ封じ込められていたことが判明する。平次は子供たちの救出に尽力し、事件の裏にある冷酷な陰謀を鮮やかに解き明かす。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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一
「親分、變なことがあるんだが――」
ガラツ八の八五郎がキナ臭い顏を持ち込んだのは、まだ屠蘇機嫌のぬけ切らぬ、正月六日のことでした。
「何が變なんだ、松の内から借金取でも飛込んだといふのかえ」
錢形の平次は珍らしく威勢よく迎へました。ろくな御用始めもないので、粉煙草ばかりせゝつて、心待ちに八五郎の來るのを待つてゐたのです。
「借金取や唐土の鳥には驚かねえが、――こいつは全く變ですぜ、親分」
「だから何が變だと言つてるぢやないか」
「一町内の子供が五人、煙のやうに消えて無くなつたのは、變ぢやありませんか、親分」
ガラツ八の小鼻は、天文を案ずるやうに脹れます。
「子供が五人揃つて消えた?――そいつは拔け詣りだらう」
平次は事もなげです。その頃子供達が誘ひ合せて、親の許しを得ずに、伊勢詣りの旅に出ることがよく流行りました。伊勢詣りとわかれば箱根の關所もやかましいことは言はず、先々の宿も舟も、何彼と便宜を與へてくれる世の中だつたのです。
「七つから九つまでの子供ですぜ、その中には女の子が二人居ますよ」
「成程そいつは少し變だな」
「その上、夕方かごめ/\か何んかやつて遊んでゐて、不意に見えなくなつた。菅笠も柄杓も仕度をする間がありませんよ」
どんな無鐵砲な拔け詣りも、それ位の用意はあるべき筈です。
「神隱しかな」
平次は何時の間にやら、坐り直して居りました。
「そんなものはあるでせうか、親分」
人間が不意に見えなくなつて、何日か何年かの後、ヒヨツクリ現はれるのを、昔は羽黒や秋葉の天狗のせゐにして、これを神隱しと言つたのです。その中には誘拐や、迷子や、記憶の喪失や、借金逃れもあつたでせうが、昔の人はそんな詮索をする氣もないほど鷹揚だつたのでせう。
「――」
「神や佛が、そんな虐たらしい事をする道理は無いぢやありませんか、ね親分。五人の子供の親達の歎きは、見ちや居られませんよ」
「――」
「何んとかしてやつて下さいよ」
「何處だえ、それは? 何時のことなんだ」
平次は漸く乘出しました。
「本郷の菊坂で」
「フーム」