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TORENDIA

錢形平次捕物控

本文約9,800字 ・ 読了時間 約20分

あらすじ(AIが作成しました)

江戸の捕物名人・銭形平次は、柏木の百姓・百兵衛が持参した難解な謎の書かれた紙片の解読を依頼される。時を同じくして、柏木の大名主・楢井家で主人が急死した後に一萬両もの公儀御用金が紛失する事件が起きる。さらに楢井家の若旦那・福松が亡くなるという事態が発生し、平次は事の真相を究明すべく現地へ向かう。平次は謎を解き明かすとともに、一萬両の隠し場所を突き止め、犯人を追い詰めていく。隠された金と謎の解明を通じ、事件の全容が明らかになる。

野村胡堂

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一

「錢形平次親分といふのはお前樣かね」

中年輩の駄馬に布子を着せたやうな百姓男が、平次の家の門口にノツソリと立ちました。

老けてゐるのはその澁紙色に焦けた皮膚のせゐで、實は三十五六をあまり越してゐないかもわかりません。油氣のない髮を藁しべで結つて、月代は伸び放題、從つて熊の子のやうな凄まじい髯面ですが、微笑すると眼尻に皺が寄つて、飛んだ可愛らしい人相になります。

「錢形の親分は奧にゐるよ――俺は子分の八五郎といふものさ」

八五郎はさう言つて、グイと長んがい顎を引いて見せました。

「道理で――」

百姓男は感に堪へた顏をするのです。

「御挨拶だね、何か用事があるのかい」

「江戸開府以來といはれた捕物の名人にしちや、少し變だと思ひましたよ。惡く思はないで下さいよ」

「言ふことが一々丁寧で腹も立てられねえ」

相手が正直過ぎて、八五郎のガラツ八も大たじ/\でした。

「八、何をして居るんだ。お客なら早く取次ぐが宜い」

平次は奧から聲を掛けます。奧と言つても入口の三疊の隣の六疊。首を伸せば、格子の外に立つた客の睫毛も讀めさう。

こんなやり取りがあつて、客の百姓男は漸く中へ通されました。

疊の上へ眞四角に坐ると、座布團から膝が二三寸はみ出して、その上に置いた手が、八つ手の葉のやうにでつかいのも、何となく大地の子らしい人柄を思はせます。

「錢形の親分さんで御座いますか。私は柏木の在の者で、百兵衞と申しますが――」

百姓男は慇懃に挨拶しましたが、八五郎に氣を兼ねたものか、容易に用事を切出しません。

「これは八五郎と言つて俺同樣の男だ。遠慮なく話すが宜い。一體どんな用事で柏木から遙々來なすつたんだ」

平次はもどかしさうに誘ひの水を向けます。

「それぢや申しますが、實は親分さんに御願ひがあつて參りました」

「――」

「外ぢやございませんが、親分の智惠でこれを一つ判じて頂き度いんで」

百兵衞はさう言つて、内懷ろから欝金木綿の財布を出すと、中から大事さうに疊んだ紙片を拔取り、その皺を寧丁に[#「寧丁に」はママ]膝の上に伸して、平次の方に押しやるのでした。

紙片は半紙を四つに切つて、それに禿筆で書いたもの、

ほうきからたつみ

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