錢形平次捕物控
本文約11,800字 ・ 読了時間 約24分
あらすじ(AIが作成しました)
餅の木坂の旗本・堀江頼母の屋敷で嫡子・秀太郎が誘拐され、用人の松山常五郎が錢形平次に捜索を依頼する。平次は聞き込みを通じ、お妾のお若との跡目争いや周囲の思惑が絡み合う屋敷内の事情を探り当てる。平次は調査の末に真相を掴み、動揺する関係者たちを救済しつつ、事件の背後に潜んでいた悪事をも明らかにしようと動き出す。平次が知恵を絞り、町方の御用聞として事件を解決へと導く様子を描く。
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一
「親分は長い間に隨分多勢の惡者を手掛けたわけですが、その中で何んとしても勘辨ならねエといつた奴があるでせうね」
ガラツ八の八五郎は妙なことを訊ねました。
晩秋のある日、神田の裏長屋の上にも、赤蜻蛉がスイスイと飛んで、凉しい風が、素袷の襟から袖から、何んとも言へない爽快さを吹き入れます。
「それはある」
平次は煙管を指の先で廻し乍ら、あれか、これかと考へて居る樣子でした。
「滅多に人を縛らない親分が、憎くて/\たまらなかつたといふ相手は一體どんな野郎です」
「主殺し、親不孝、――そんなのは惡いに相違ないが、――本當に憎くてたまらないのは子さらひだよ」
「へエ――?」
「梅若丸の昔から、人さらひの種は盡きないが、子供をさらはれた親の歎きを思ふと、俺は斯う息づまるやうな氣がするよ、――世の中にあれほど殺生な惡事はないな」
「そんなものですかねエ」
八五郎は長んがい顎を撫て感心して居りました。
「ところで八」
「へエー」
「近頃俺は、誘拐された子供を搜してくれと頼まれてゐるんだ」
「搜してやりや宜いぢやありませんか」
「相手がよくないよ」
「へエー」
「二千二百石取の御大身、お旗本の歴々だ。町方の者をゴミ見たいに扱ふから、俺は旗本や御家人は大嫌ひなんだが、跡取の男の子がさらはれたとなると、氣の毒でもあるな」
「氣の毒がる位なら、行つて搜し出してやりませう。金にする氣でさらつたのならまだ何うにかなるが、取還す手段がなきや、可哀想ぢやありませんか」
八五郎はやつきとなりました。わがガラツ八は稀に見る女人崇拜者であると共に、かなりセンチメンタルな人道主義者でもあつたのです。
「可哀想には可哀想だが、そのお屋敷には凄いお妾が一人飼つてあるから、御家騷動が絡んでゐさうなんだ。土臺木つ葉旗本などが御大層に――家名を絶やさない爲、――云々と勝手な理由をつけて、碌でもない子を幾腹も産ませるなんざ僭上の沙汰だよ。俺は暇で/\仕樣がないんだが、そんな揉め事には首を突つ込み度くないよ」
「成程ね」
平次の潔癖の前に、八五郎は一應承服しました。が、