錢形平次捕物控
本文約12,000字 ・ 読了時間 約25分
あらすじ(AIが作成しました)
神田明神下の銭形平次は、御簾中様の御奉納品と千両の金が紛失したという島五六郎の用人らの依頼を受ける。平次は千本金之丞の邸宅に赴き、現場の状況から邸内の人間による犯行と見抜き、隣の酒屋の離屋と庭の杉の梢から失せ物を発見する。事件の背景には、島五六郎への復讐を画策した千本の美しい妻の策動があった。真相を知った平次は、罪を犯した妻が自害したことを八五郎に語り、やりきれない思いを抱えて家路につく。
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一
「親分、變な野郎が來ましたぜ」
ガラツ八の八五郎、横つ飛びに路地を突つきつて、庭口から洗濯物をかきわけながら、バアと縁側へ顏を出しました。神田明神下の錢形平次の住居、秋の朝陽が長々と這ひ上がつて、簡素な調度を照らして居ります。
「何處へ何が來たんだ。相變らず騷々しいなお前は」
平次はとぐろをほぐして、面白さうなこの注進を迎へました。
「二本差が二人、肥つたのと、痩せたのが、角の酒屋で訊いて居ましたよ――高名なる錢形平次殿の御屋敷は、この邊ではないか――とね、お屋敷は嬉しいぢやありませんか」
ペロリと舌を出して、所謂平次殿のお屋敷中を一と眼に見渡す八五郎です。
お靜の手が屆くので、何處から何處まで嘗めたやうに綺麗ですが、座布團二枚、長火鉢が一つ、鐵瓶と茶道具と、そして、そして――、それつきりと言つた、簡素そのものの小市民生活です。
「お城と言はないのが見付けものさ、――いづれお家の重寶友切丸かなんか紛失して、易者の代りに俺のところへ來ると言つた寸法だらうよ」
そんな話をして居るところへ、
「頼まう」
などと、權柄らしい聲が聞えて來ました。
さて、女房のお靜に取次がせて、たつた一間きりの六疊に通されたのは、八五郎が前觸れをした通り、肥つた中老人と、痩せた若い武家の二人。
「拙者は指ヶ谷町に住居いたす、御簾中樣御用人島五六郎樣用人川前市助と申すもの、主人名代として罷り越しました」
「拙者は富坂町に住んでゐる千本金之丞と申す者」
それは痩せた若い方でした。二人は名乘りをあげて、眞四角にお辭儀をするのです。岡つ引風情に斯う丁寧な挨拶をするのは、いづれ退引ならぬ頼みがあつてのことでせう。
錢形平次は膝つ小僧を揃へて、相手の出やうを待つ外はありません。
「外ではないが、平次殿。折入つての願ひがあつて、我々兩名わざ/\參つたが、何んと聽いてはくれまいか」
川前市助が先に口をきりました。よく肥つて、脂ぎつて、鼻が大胡坐をかいてゐる五十二三の眞つ黒な男ですが、調子が卑下慢で、妙に拔け目がなささうで、申分なく用人摺れがして居さうです。